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検査成績書に30分かかるのは、測っているからではない

2026年9月10日 / 48時間ツール工房 / 町工場の検査記録

初回の納品前に、得意先から言われる。「検査成績書を付けてください。うちの様式でお願いします」。寸法は測ってある。ノギスとマイクロメータの値は、図面のコピーの余白に鉛筆で書いてある。あとは事務所のPCで様式を開いて、打ち込むだけ——そのはずが、30分かかる。そして、打ち間違いが怖いので、もう一度読み合わせる。

この記事は、その30分を5分にするための話です。先に結論を書きます。時間を食っているのは測定でも入力でもなく、「得意先ごとに違う様式に合わせる」作業です。測定値そのものは10個か20個しかありません。それを毎回、別のレイアウトの枠へ移し替えているところに時間が溶けています。

30分の内訳を書き出してみる

実際に何をしているかを分解すると、だいたいこうなります。品目や得意先の数で前後しますが、比率はどの工場でも似た形になります。

やっていることだいたいの時間本当に必要か
測定値をメモから読み上げて入力5分必要(ただし1回でいい)
前回の別工番のファイルを探してコピー3分不要
品名・工番・図番・ロット・数量を打ち直す5分不要(受注時に入力済み)
規格値と公差を図面から拾って埋める7分不要(品番ごとに1回でいい)
公差内かどうかを目で見て判定・OK/NGを書く4分不要(計算で出る)
得意先の様式に合わせて行を足す・列をずらす4分不要
読み合わせの二重チェック5分必要だが、対象が減る

「必要」と書けるのは、測定値の入力と、最後の確認だけです。残りは、すでにどこかにある情報を、もう一度打っている時間です。工番と品名は受注のときに入力してある。規格値と公差は図面に書いてある。公差内かどうかは引き算で出る。それでも毎回やり直しているのは、様式のファイルが「白紙から埋めるもの」として存在しているからです。

よくある誤解:「検査に時間がかかっている」

検査そのもの——測定器を当てて数値を読む作業は、熟練した人ほど速く、たいてい短時間で終わっています。長いのは、測り終わってから提出物になるまでの間です。ここを取り違えると、「検査を省く」「抜き取りの数を減らす」という、品質に直結する危ない方向に手を付けてしまいます。減らすべきなのは、測る回数ではなく、書き写す回数です。

様式が増え続ける理由

得意先が5社あれば、成績書の様式も5つあります。A社は縦向きで社印の位置が決まっている。B社は測定値のほかにn数と平均を要求する。C社はPDFではなくExcelのまま送れと言う。D社は自社のポータルに入力させる。どれも先方の都合であって、こちらから統一することはできません。

ここで多くの工場が取る対策が、「様式ごとにテンプレートのxlsxを用意する」です。間違ってはいないのですが、半年で行き詰まります。

1. どれが最新か分からなくなる

得意先が様式を改訂します。「検査成績書_A社_新_v3_これ使う.xlsx」がフォルダに並び、隣に「旧」も残っている。急ぎのときほど、間違ったほうを開きます。

2. 同じ測定値が様式の数だけ散らばる

同じロットの測定値が、A社様式のファイルと、社内保管用の一覧と、場合によっては手書きの原本の3か所にあります。あとから「あのロットの寸法は」と聞かれたとき、探す先が3つになります。1年後に不具合の連絡が来たときに効いてくるのは、この探しやすさです。

3. 数式が壊れても気づけない

行を挿入したときに判定のIF式が追従せず、1行だけ空欄のまま出てしまう。成績書は「出したら終わり」の書類なので、間違いが手元に戻ってきません。気づくのは、得意先から指摘されたときです。

考え方を1つ変える:記録と提出物を分ける

やることは単純です。測定値は「記録」として1回だけ入れ、成績書は「その記録から作る出力」にします。紙で言えば、原本が1冊あって、そこから必要な形で写しを出すイメージです。様式が5つあっても、入力は1回で済みます。

今のやり方分けたあと
測定値の入力様式のファイルに直接、様式の数だけ1回だけ
品名・工番・図番毎回打ち直す受注時のものを選ぶ
規格値・公差毎回、図面から拾う品番ごとに1回登録し、以後は自動
OK/NGの判定目で比べて書く入力した瞬間に出る
得意先の様式ファイルを探して開く得意先を選ぶと、その形で印刷される
過去の検索フォルダを探す工番かロットで引く

この形にすると、二重チェックの対象も変わります。今は「様式に正しく写せているか」を確認していますが、写す作業が無くなるので、確認するのは「測定値を正しく読み取って入れたか」だけになります。チェックすべき箇所が減ることが、そのままミスの減少になります。

最低限そろえる項目

品質管理の全体像を作ろうとすると、必ず途中で止まります。成績書を出すためだけなら、必要な項目はこれだけです。

項目いつ入れるかなぜ要るか
品番・図番・図面の改訂記号品番の登録時に1回改訂前の図面で測っていた、を防ぐ
測定箇所と規格値・公差(上下)品番の登録時に1回判定の根拠。ここが自動化の効きどころ
測定器の種類品番の登録時に1回成績書に「何で測ったか」を求める得意先が多い
工番・ロット・数量・検査日検査のとき(受注情報から選ぶ)どの納品分の記録かの特定
測定値(n数ぶん)検査のとき唯一、人が新しく入れる情報
検査者検査のとき(選択式)記録として要る。手入力にはしない

ここで大事なのは、最初から全品番を登録しようとしないことです。図面が何百枚もある工場で、全部の規格値を先に入れる作業は、まず終わりません。成績書を求められる品番から、必要になった時点で1つずつ登録します。2回目以降の同じ品番は、その場で終わります。実際、成績書を要求されるのは取引全体の一部で、しかも繰り返し品が多いはずです。

現場が入力してくれるかどうか

仕組みの成否は、機能の数ではなく、検査台の前での1回の入力が何秒で終わるかで決まります。数値を扱う画面は、特にここで差が出ます。

逆に、検査台で「所見を文章で入力」を求める設計は定着しません。文章が必要になるのは不具合が出たときだけなので、その場合だけ写真を1枚撮って添えるほうが、現場の負担も情報量も現実的です。

数字を入れると、その場で判定と集計が出る動きを試す 町工場向けに作った日次生産記録のデモです。良品数と不良数を入れると、不良の多い順と理由の内訳がその場で出て、月次の集計表がそのまま印刷できます。成績書そのものではありませんが、「現場が数字を入れる」「基準を割ったものだけが目立つ」「印刷は様式に合わせて出す」という中身は検査記録と同じ作りです。ブラウザだけで動き、入力したデータは端末の中だけに残ります。

いきなり全部やらない。3段階に分ける

第1段階:測定値の記録と、成績書1様式の印刷

品番ごとの規格値を登録し、測定値を入れると公差判定が出て、いちばん提出頻度の高い得意先1社の様式で印刷できるところまで。これだけで、冒頭の30分は5分前後になります。画面1〜2枚、機能1つなので、ライトプラン(¥98,000・48時間)の範囲です。

第2段階:得意先ごとの様式

得意先を選ぶと、その会社の様式で出るようにします。ここで初めて、A社の縦向き・B社のn数と平均・C社のExcel出力といった違いを吸収します。1社目を作ってから追加するほうが、様式ごとの違いがはっきりして安く済みます。

第3段階:履歴の蓄積と検索

工番やロットで過去の記録を引けるようにし、複数の検査者がログインして使う形にします。1年前の納品分について問い合わせが来たときに、その場で出せる状態です。データが貯まり、ログインと権限が入るので、この段階はスタンダードプラン(¥298,000・5営業日)です。

第1段階で止めても構いません。使ってみて要らないと分かった機能を作らずに済むほうが、結果として安く上がります。

期待しないほうがいいこと

測定器からの自動取り込み

デジタルノギスやマイクロメータからの出力を直接取り込む構成は、機種と接続方式に強く依存します。お使いの測定器の型番と、出力用のケーブルやユニットの有無を確認しないと、できるともできないとも言えません。相談の時点で型番を教えていただければ、可否を先に調べてお伝えします。できない場合は「ここは手入力のまま残ります」と最初に書きます。

工程能力(Cp・Cpk)の自動判定

計算式そのものは簡単なので、数字を出すこと自体はできます。ただし、意味のある値になるのは、同じ品番・同じ条件のデータが十分に貯まってからです。数個の測定値から出した指数を根拠に判断すると、かえって危険です。第3段階まで進んで記録が貯まってきた段階で、必要なら足すのが現実的です。

よくある質問

ISO9001の記録として認められますか

電子データでの記録・保管そのものは、規格上で否定されているものではありません。ただし、実際に認められるかどうかは、御社の品質マニュアルの記載と、審査機関の判断によります。私たちが用意できるのは、記録が後から書き換えられた場合に分かるようにすること、保存年限のあいだ確実に取り出せること、いつでもCSVとPDFで全件を書き出せることの3点です。審査で求められる形が決まっている場合は、その要求をそのまま仕様に入れてください。「対応しています」と一言で答えられる話ではないので、曖昧なまま進めません。

紙の記録も残したいのですが

問題ありません。印刷して署名・押印し、紙を原本として綴じる運用のままで構いません。その場合でも、探すときは画面から引けるという利点は残ります。むしろ、紙をやめることを目的にしないほうがうまくいきます。

検査台にPCもタブレットもありません

共用のタブレットを1台、検査台の横に固定して置く形が最も多い構成です。ログインは合言葉1つ、検査者は画面上で選ぶだけにします。それも難しければ、これまで通り手書きのメモで測定し、事務所が1日1回まとめて入力する形でも構いません。その場合でも、様式に合わせて打ち直す作業と、公差の目視判定は無くなります。

過去の紙の成績書を取り込めますか

紙の写しを画像として保管し、工番から引けるようにすることはできます。ただし、紙に書かれた数値を読み取ってデータ化する作業は、私たちのほうでは行いません。枚数が多い場合、費用のほとんどが入力作業になってしまい、48時間で作る道具の趣旨から外れるためです。過去分は画像で引ける形にして、新規分からデータで貯めていくやり方をおすすめしています。

得意先が指定のポータルへの入力を求めてきます

先方のシステムへ自動で流し込むことは、たいていの場合できません(相手側の仕様と許可が要ります)。現実的なのは、ポータルに入れる順番どおりに画面へ表示して、見ながら入れられるようにすることです。それだけでも、ファイルを行き来しながら入力する手間は無くなります。

データは誰が持つのですか

お客様のものです。CSVでいつでも全件書き出せる形にしてお渡しし、ソースコードもzipでお渡しします。私たちとの契約が終わってもツールは動き続け、社内の方や他社が引き継げます。お預かりした図面や測定データを、他のお客様の案件に使うことはありません。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

第1段階(測定値の記録と1様式の印刷)がライトプラン、第3段階まで含めるとスタンダードです。いずれも初期費用のみで、月額の利用料はかかりません。印刷・PDF出力とCSVの入出力、スマホ対応は、どちらのプランでも標準で入っています。得意先の様式が増えたときの追加は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。

得意先から指定されている様式と、図面を1枚送ってください

成績書の様式(ExcelでもPDFでも、紙をスマホで撮ったものでも構いません)と、よく作る品物の図面が1枚あれば十分です。測定箇所がいくつになり、画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。測定器の型番を書き添えていただければ、自動取り込みができる機種かどうかも調べてお伝えします。今のExcelのままで足りると判断したときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。

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