48時間ツール工房
ホーム記事 / 進捗

「あの件、いつ上がりますか」に即答できない理由

2026年9月9日 / 48時間ツール工房 / 町工場の工番の追い方

得意先から電話が入る。「先月お願いした工番、いつ上がりそうですか」。受話器を押さえて工場を覗く。職長は機械の前にいて、手が離せない。ホワイトボードの磁石は「加工中」のままだが、それがいつ書かれたものかは分からない。外注に出した分は、たしか先週の水曜に引き取りに来たはずだ。「確認して折り返します」と言って電話を切る。

この記事は、この折り返しを無くすための話です。先に結論を書きます。即答できないのは、記録を取っていないからではありません。むしろ、たいていの町工場は記録を取りすぎているくらいです。問題は、その記録が7か所に分かれていて、突き合わせられる人が社内に1人か2人しかいないことです。

「今どこ」を答えるために、頭の中でやっていること

納期を聞かれたとき、答えられる人が参照している場所を並べてみます。町工場の規模や業種で多少入れ替わりますが、だいたいこの形になります。

知りたいことどこにあるかいつの情報か
何を、何個、いつまでに注文書のFAX/メール、バインダー受注時のまま
工番と品名の対応Excelの「工番一覧」事務所が入力した時点
着手したかどうかホワイトボードの磁石・マグネットシート誰かが動かした時点
実際どこまで進んだか現場の作業日報(紙)翌朝、事務所が読むまで不明
外注に出した分発注書の控え、電話メモ出した日は分かるが戻り予定は記憶
検査が済んだか検査記録の用紙検査担当の手元
出荷したか送り状の控え出荷後

7か所を頭の中で突き合わせて、はじめて「あと3日です」が出てきます。これができるのは、受注から出荷までの流れが頭に入っている人だけです。属人化していると言われる状態の正体は、能力の差ではなく、参照先の数です。7か所を1か所にすれば、入って半年の事務員でも同じ答えが出せます。

よくある誤解:「うちは管理ができていない」

できていないのではなく、紙とボードの上では完成しているのです。日報も検査記録も外注の控えも、法定の保存や品質の証明のために必要で、実際に残っている。足りないのは記録そのものではなく、「聞かれた瞬間に、離れた場所から、まとめて見る」手段だけです。ここを取り違えると、必要のない大きな仕組みを買うことになります。

ホワイトボードは、捨てなくていい

工程管理の相談で最初に言われるのが「ホワイトボードをやめたい」ですが、私たちは止めません。ボードには他の道具に無い強さが3つあります。

ボードの弱点は、この3つの強さと引き換えの、はっきりした3つだけです。過去が残らない(消した瞬間に消える)、離れた場所から見えない(事務所・自宅・出先)、聞かれたときに手元に無い。逆に言えば、この3つだけを埋める道具を足せば足ります。ボードを置き換える必要はありません。

Excelの工程表が半年で止まる、3つの理由

多くの工場が一度は作っています。そして、たいてい途中で更新されなくなります。理由は現場の意識ではなく、道具の性質です。

1. 更新できる人が1人だけになる

PCは事務所にしかなく、現場の手は油や切粉で汚れています。結果、現場が口頭で伝え、事務所が代わりに入力する形になる。伝言が1回挟まると、入力は必ず遅れ、遅れた表は誰も信用しなくなります。信用されない表は、更新する動機も失います。

2. 行を足すと壊れる

工番が増えるたびに行を挿入する。VLOOKUPの範囲が追従せず、条件付き書式の適用先がずれ、ガントチャート用の日付計算が1行だけ狂う。作った人は直せますが、その人が忙しい日は放置されます。

3. 同時に開けない

共有フォルダのxlsxは、誰かが開いていると読み取り専用になります。「閉じてください」と言いに行くのが面倒で、コピーを作る。コピーが2つになった時点で、どちらが本物か分からなくなります。

Excelが悪いという話ではありません

単価表、原価の試算、客先提出用の帳票。1人が腰を据えて作る書類は、Excelのほうが速いです。向いていないのは「複数人が、その場で、少しずつ書き込む」使い方だけです。工程の進捗はまさにこれに当たります。

即答するために、最低限そろえるもの

いきなり生産管理の全体像を作ろうとすると、必ず途中で止まります。「あと何日か」を答えるためだけなら、必要な項目はこれだけです。

項目入力する人なぜ要るか
工番・品名・数量事務所(受注時)問い合わせの入口。得意先は工番か品名で聞いてくる
客先の希望納期事務所(受注時)遅れているかどうかの基準
工程の並び事務所または職長「あと何工程残っているか」の分母
各工程の完了現場(その工程を終えた人)これだけが「今どこ」の答え
外注の出し日と戻り予定事務所または職長社内に無い期間を可視化する。ここが一番よく抜ける
出荷日事務所完了の確定と、過去の実績

ここで一番大事なのは、「進捗率(%)」を項目に入れないことです。60%か70%かを正確に入れられる人はいません。入れられない項目は必ず空欄になり、空欄が増えると表全体が信用を失います。「どの工程まで終わったか」という事実だけを記録します。旋盤が終わっているかどうかなら、やった本人が迷わず答えられます。

現場が押してくれるかどうかが、すべてを決める

仕組みの成否は、機能の数ではなく、現場の1回の入力が何秒で終わるかで決まります。私たちが作るときに守っているのはこの5つです。

逆に、現場に「今日の作業内容を文章で入力」を求める設計は、まず定着しません。文章が必要な情報は、これまで通り紙の日報に書いてもらい、あとから写真で残すほうが現実的です。

工程の進み具合を1画面で見る、という動きを試す 工務店向けに作った工程表のデモです。業種は違いますが、「工程を並べる」「終わったところまでを記録する」「今どこで止まっているかを一覧で見る」という中身は工番の進捗管理と同じ作りです。ブラウザだけで動き、入力したデータは端末の中だけに残ります。町工場そのものを想定したものは日次生産記録と不良集計のデモを公開しました。

いきなり全部やらない。3段階に分ける

第1段階:工程の完了打刻だけ(ホワイトボードは残す)

工番一覧と、工程ボタンだけを作ります。ホワイトボードはそのまま使い続けます。並行して2週間ほど回すと、ボードと画面のどちらを見るようになるかが自然に分かります。この段階で「あと何工程」は答えられるようになります。画面1〜2枚、機能1つなので、ライトプラン(¥98,000・48時間)の範囲です。

第2段階:外注の出し・戻り

社内の工程が見えるようになると、次に効いてくるのが外注です。「メッキに出したまま」「熱処理が戻ってこない」が、遅れの理由として浮かび上がります。出し日と戻り予定を入れ、予定日を過ぎたものだけを一覧に出します。

第3段階:検査記録と出荷

検査結果を画面から入れて、検査成績書の様式で印刷できるようにします。ここまで来ると、工番一つひとつに受注から出荷までの履歴が残ります。データが貯まり、複数人がログインして使う形になるので、この段階はスタンダードプラン(¥298,000・5営業日)です。

第1段階だけで止めても構いません。むしろ、使ってみて要らないと分かった機能を作らずに済むほうが、結果として安く上がります。

即答できるようになると、何が変わるか

誇張せずに書きます。ツールを入れて短くなるのは、加工時間ではありません。短くなるのは、探す時間と、待たせる時間だけです。

逆に、期待しないほうがいいこと

負荷の自動計算や、最適な生産計画の自動立案は、この規模では現実的ではありません。機械ごとの段取り時間、材料の入荷、人の技能、飛び込みの特急品。これらを正しく入れ続けるコストのほうが、得られる精度より高くつきます。計画を立てるのは人のままで、「今どうなっているか」を人が見られるようにするところまでが、48時間で作る道具の役目です。

よくある質問

現場にスマホの持ち込みが禁止です

共用のタブレットを1台、工程の入口や検査台の横に固定して置く形にできます。ログインは合言葉1つにして、名前は画面上で選ぶだけにします。それも難しい場合は、紙の日報のまま集めて、事務所が1日1回まとめて入力する形でも構いません。その場合でも、7か所を突き合わせる作業は1か所を見る作業になります。即時性は落ちますが、翌朝には全工番の状態が揃います。

生産管理ソフトをすでに入れています

CSVで出し入れできるものなら、たいていつながります。既存のソフトを置き換えるのではなく、現場が触る入力の部分だけを外に出す使い方が現実的です。つながらない場合は「ここは手作業のまま残ります」と最初に明記します。できないことを曖昧にしたまま進めません。

工程の並びが、品物ごとにばらばらです

固定の工程表を1つ作るのではなく、工番ごとに工程を選んで並べる形にします。よく出る組み合わせを「型」として登録しておけば、受注時の入力は2〜3タップで済みます。すべての品物を同じ流れに押し込もうとする設計が、いちばん定着しません。

何人まで使えますか

ライトプランは個人〜数人での利用を想定しています。現場の全員が打刻し、事務所と職長が一覧を見る、という使い方なら10〜20人規模までは第1段階の形で足ります。人ごとの権限を分けたい、誰がいつ何を変えたかの履歴を残したい、という要件が入るとスタンダードです。

データは誰が持つのですか

お客様のものです。CSVでいつでも全件書き出せる形にしてお渡しし、ソースコードもzipでお渡しします。私たちとの契約が終わってもツールは動き続け、社内の方や他社が引き継げます。お預かりした図面や受注データを、他のお客様の案件に使うことはありません。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

先ほどの第1段階(工番一覧と工程の完了打刻)がライトプラン、第3段階まで含めるとスタンダードです。いずれも初期費用のみで、月額の利用料はかかりません。印刷・PDF出力とCSVの入出力、スマホ対応は、どちらのプランでも標準で入っています。

今お使いのExcelとホワイトボードの写真を、そのまま送ってください

工番一覧のExcel、ホワイトボードを撮った写真、作業日報の用紙。この3つがあれば十分です。どの工程を打刻の対象にすれば「あと何日か」に答えられるようになるのか、画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。今のやり方のままで足りると判断したときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。

メールで相談する

関連:製造業のみなさまへ日報の転記をなくすと月末が半日戻る話「簡単なシステムを作ってほしい」を開発会社に断られたら無料診断でプランを調べる記事一覧