「あと何個、納めればいいんでしたっけ」
客先から電話が来ます。「先日の注文、あと何個残っていますか」。ここで一度、保留にします。注文書の綴りをめくって「品番 C-21、300個、6月末」を確認します。次に納品書の控えの束を日付順にめくって、その品番の行を拾い集めます。6月3日に100個、6月11日に80個……足して、引きます。途中で「あのとき20個だけ先に持っていった分は納品書を切ったか」が分からなくなり、もう一度めくります。答えるまでに5分、自信が持てるまでにはもう少しかかります。
先に結論を書きます。残数が出てこないのは、記録していないからではありません。注文書も納品書の控えも、どちらもきちんと綴じてあります。問題はその形で、注文は1枚で来るのに、納品は何枚にもなることです。注文書の綴りは注文の順に並び、納品書の控えは日付の順に並びます。並べ方の鍵が違うので、どちらか片方を見ても残数は出ません。残数は書いてある数字ではなく引き算の答えで、その引き算を毎回、紙をめくりながらやり直しています。
納入残が出てこない3つの理由
1. 注文は1行、納品は何行にもなる
「300個を6月末まで」の注文に対して、現場は材料の入りと機械の空きに合わせて100個・80個・120個と分けて納めます。客先の都合で「まず50個だけ先に」と言われることもあります。つまり注文と納品は1対1ではなく1対多です。紙の注文書には「あと何個」を書く欄が無く、納品書には「この注文の通算で何個目か」が書いてありません。どちらの紙にも残数が載らないので、突き合わせるしかありません。
2. 数が動くのに、注文書は差し替わらない
「300個を250個に変更してください」は、たいてい電話かメールで来ます。新しい注文書は来ません。綴じてある注文書の余白に鉛筆で「→250 6/10 田中様」と書き込んで終わりです。その書き込みを見落とすと、残数が50個ずれます。追加注文も同じで、正しい注文数がどこにあるのかが、人によって違う状態になります。書き込んだ本人が休んだ日に電話が来ると、答えられません。
3. 納めた数と、相手が受けた数が違うことがある
100個納めて、5個が不良で返ってくる。あるいは客先の検収で数が合わず、相手の台帳では95個になっている。この差は月末の請求で初めて表に出ます。こちらは「あと100個」、先方は「あと105個」。どちらの紙も自分の側からは正しく見えるので、突き合わせるまで誰も気づきません。
この3つに共通していること
どれも「記録していない」という話ではありません。注文書も納品書の控えも、変更を伝えたメールも、それぞれの場所にあります。足りないのは記録そのものではなく、注文の1行に、納めた分をぶら下げる置き場です。紙は鍵を1つしか持てないので、注文順に並べた瞬間、納品日順には読めなくなります。「あと何個」に5分かかる正体は、その引き算を毎回やり直していることです。
やりたいのは、生産管理システムではありません
ここを取り違えると大きくなりすぎます。欲しいのは工程の自動計画でも、在庫の自動引当でも、EDIの全面連携でもありません。「注文 No.2411、A社、品番 C-21:注文 300、納入済 180、残 120、次は 7月3日に 60 の予定」の1行です。客先から電話が来たときに、保留にせずその場で答えられること。月末に「まだ納まっていない注文」を納期順に並べられること。まずはそれだけです。
この1行が出るために必要なのは、注文と納品が同じ鍵でつながることだけです。入れる内容は、いま注文書と納品書に書いているものとほぼ同じで、変えるのは、書いた先で引き算が済んでいるかどうかです。
作るもの:3段階に分ける
第1段階:注文を1行にして、変更は重ねる
注文を受けたら「客先・品番・数量・納期・注文書番号・単価」を1行入れます。数量や納期が変わったときは、上書きせずに変更の行を重ねます(6月10日 300→250、伝えてきた方の名前つき)。画面に出るのは常に最新の250ですが、いつ誰の指示で変わったかが残ります。これは残数のためというより、後日「言った・言わない」になったときのためです。紙の余白の鉛筆書きが、消えない形で残ると思ってください。
第2段階:納品のたびに1行入れる
納品書を切るときに「どの注文へ、何個、納品日、納品書番号」を1行入れます。注文を選んで数を打つだけで、10秒です。ここで引き算が済みます。残数は自動で減り、納品書もこの画面から印刷できるので、控えを別に綴じる作業もここで消えます。不良返品や検収差異が出たときはマイナスの行を1本入れます。数がずれた事実が消えずに残るので、月末の請求で慌てません。
第3段階:残っている注文を、納期順に並べる
「まだ納まっていない注文」だけを納期の近い順に一覧にします。期限を過ぎたもの、今週中のものは色で出ます。客先別・品番別にも切り替えられ、そのままCSVと印刷で出せます。朝の打ち合わせで見るのはこの1枚です。電話が来たときは客先名か品番で引けば、残数と次の予定がその場で出ます。
入れるものと、出てくるもの
入れるもの:注文の1行(客先・品番・数量・納期・注文書番号)/変更があったときの1行/納品のたびの1行(数量・納品日・納品書番号)/返品・検収差のマイナス1行(出たときだけ)。
出てくるもの:注文ごとの納入残/納期順の未納一覧(期限超過は色つき)/納品書の印刷/客先別・品番別の残数/注文と納品の履歴CSV/数量変更の記録。
逆に、期待しないほうがいいこと
- いつ作るかは決まりません。出るのは「あと何個を、いつまでに」であって、どの機械でいつ着手するかは別の話です。そちらは機械の空き状況や工番の進み具合の側になります。混ぜると画面が増えて、どちらも中途半端になります。
- 客先の検収数と自動では合いません。先方の台帳を見る手段はこちらにありません。できるのは、返品や検収差をマイナスの行として残し、差があること自体を見えるようにするところまでです。突き合わせの電話が無くなるわけではなく、電話のときに根拠がすぐ出るようになります。
- 納品の入力をしなければ、残は動きません。ここは仕組みでは解決できない部分です。だからこそ、納品書をこの画面から印刷する形にして「入力する」と「納品書を切る」を同じ一手にまとめることを設計の条件にします。別々の作業にすると、必ず片方が飛びます。
- 過去の注文はさかのぼりません。入れ始めた日から先の話です。現実的なのは、いま残っている注文(未納のもの)だけを初日に入れることです。多くの場合、数十行で済みます。
よくある質問
客先のWeb-EDIから注文を落としています
CSVやPDFで落とせるなら、その形のまま取り込む口を作れます。ただし先方のシステムに自動でつなぎには行きません(ログインIDを預かる形になり、先方の規約にも触れます)。落としたファイルを画面に放り込む一手だけ残す形が、いちばん壊れにくい作りです。取り込んだあとに数量変更が来た場合は、第1段階の変更行として重なります。
内示と確定注文が別に来ます
残数を引き算する相手は確定した注文だけにします。内示を同じ列に混ぜると、残数が「たぶんの数」になってしまい、電話で答えられる数字ではなくなります。内示と確定のズレをどう扱うかは別の悩みなので、内示と確定注文のズレの記事に分けて書いています。画面としては、内示は参考の列として横に置くのが現実的です。
頼まれた数より多く納めてしまうことがあります
残数がマイナスになるので、そのまま「過納 5」と出ます。止めたり警告で作業を妨げたりはしません(現場では先に納めてから相談することが普通にあるためです)。出るようにしておくと、請求のときに気づけます。逆に、分納の最後の1回で端数が合わないという形で出ることも多く、これは納品書の切り忘れが見つかる典型です。
注文の数量変更が電話で来ます。誰が入れるのですか
電話を受けた人がその場で1行入れるのが理想ですが、現実には事務所に戻ってからになります。入力は変更内容と伝えてきた方の名前だけにして、30秒で終わる形にします。ここを「変更理由」まで書かせると入力されなくなり、入力されない仕組みは、紙の余白と同じところに戻ります。
工番の管理とは何が違うのですか
工番は社内の仕事の進み具合(切削が終わった、メッキに出した)で、納入残は客先への約束の残りです。似て見えますが見る人が違い、聞かれる場面も違います。片方だけで足りる工場も多いので、まずはどちらの電話が多いかで決めてください。「あの件いつ上がりますか」が多ければ工番の追い方、「あと何個ですか」が多ければこちらです。両方必要な場合は、同じ画面の中で注文の1行に工番をぶら下げる形にします。
まず何から始めればいいですか
いま未納になっている注文を、紙から1枚の紙に書き出してみてください。客先・品番・注文数・納入済・残・納期の6列です。30分で書けて、書いたあとその紙を毎日更新し続けられそうなら、いまは仕組みを作るタイミングではありません。書き出す途中で「この納品書、この注文のぶんだったか」で手が止まったなら、そこが直すところです。
データは誰が持つのですか
御社のものです。注文・納品・変更の履歴はいつでもCSVで書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。注文の記録には客先名・品番・単価が含まれるので、扱いには特に気をつけます。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
注文と納品を1人が入れて、残数と納期順の未納一覧を出し、納品書を印刷するところまではライトプランの範囲です。複数人がそれぞれの端末から入れて誰が入れたかを残す、Web-EDIから落としたCSVを取り込む、工番を注文にぶら下げる、客先ごとに締め日を変えて請求まで出す——このあたりはスタンダードになります。列を足す、納品書の様式を変える、といった変更は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
「あと120個です。次は7月3日に60個お持ちします」がその場で言える状態にします
いまお使いの注文書を1枚と、それに対する納品書の控えを2〜3枚(単価は伏せていて構いません)。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。分納がほとんど無く、注文のたびに1回で納めきっているのであれば、作らないほうがよいとお伝えします。相談は無料です。
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