「その機械、いつ空きますか」
引き合いの電話が入ります。「この品物、いつ出せますか」。答えるには、いま何が流れているかを思い出し、残りを数え、段取り替えの時間を足し、来週入る予定の分を引きます。これを5分でやれるのは、たいてい社内に1人か2人です。その人が現場に出ていると、返事は夕方になります。返事が遅れた案件は、こちらが断ったわけでもないのに他所へ流れていきます。
先に結論を書きます。機械の空きが即答できないのは、機械の一覧が無いからではありません。一覧はたいていあります。無いのは、その機械で「何ができて、何ができないか」と、段取り替えに何時間かかるかと、いま載っている仕事があと何時間で終わるかの3つが、同じ場所に揃っていないことです。揃っていないので、毎回ベテランの頭の中で組み立て直すことになります。順番に説明します。
空きが出てこない3つの理由
1. 機械ごとの「できる条件」が、どこにも書かれていない
同じ種類の機械が何台あっても、実際には同じではありません。この号機はこの寸法まで、この材質は熱で歪むからあの号機、この号機は精度が出るので仕上げ専用——こうした条件は、機械の台帳ではなく人の頭にあります。ですので、一覧を見ても「空いている機械」と「その仕事を流せる機械」が一致しません。空欄を見て割り付けると、現場で「これはこっちでは無理です」と戻ってきます。
この条件は複雑に見えて、たいていは数字と選択肢の組み合わせ3〜5個に収まります。最大寸法、扱える材質、精度の等級、対応できる数量の下限か上限。書き出してみると、思ったより短い表になります。
2. 段取り替えの時間が、予定に入っていない
予定表に入っているのは、たいてい加工そのものの時間です。ところが実際に機械を占める時間には、段取り替え、材料待ち、初品の検査と承認が含まれます。段取りが2時間かかる機械で1日に3品番を流せば、6時間は加工していません。
この分が予定に入っていないので、紙の上では空いているのに実際は空いていないという状態が常に起きます。そして、ずれた理由は毎回「今日は段取りが多かったから」と説明されます。説明はされますが、次の予定には反映されません。
3. 予定と実績が、別の紙にある
予定はホワイトボードかExcel、実績は日報です。日報が事務所に上がるのは翌朝で、Excelに入るのはその日の昼です。つまり予定表は、常に半日から1日古い実績の上に立っています。1台が半日遅れると、その後ろに並んだ仕事も全部遅れますが、それが予定表に現れるのは翌日です。
この3つに共通していること
どれも「予定表の作り方が悪い」という話ではありません。予定を立てる仕事と、予定が現実に追いつく仕事が、別々になっているだけです。ホワイトボードは、書いた瞬間はいちばん正確で、翌日にはいちばん古くなります。必要なのは新しい予定表ではなく、現場が終わりを押したら、後ろの予定がひとりでに動く形です。
効くのは、受注の後ではなく、見積の返事をする時点です
着手日が分かって価値があるのは、注文が確定した後ではありません。「いつ出せますか」に答える、その電話の最中です。
品名と数量と、加工の条件をいくつか入れた時点で、次が1画面に出る状態を目指します。
- その仕事を流せる機械はどれか(条件に合う号機だけが残る)
- その機械が空くのはいつか(いま載っている仕事の残り時間と、段取り替えを含む)
- 着手から完了までの見込み(後工程・外注に出す分があればそれも含めた日付)
ここで大事なのは、出すのが「正確な納期」ではなく「いま分かっている前提での着手日」でよいことです。電話口で必要なのは小数点以下の精度ではなく、来週なのか再来週なのかです。前提が変わったら画面の数字も変わる、それで足ります。逆に「正確に出そう」と作り込むと、入力する項目が増えて、誰も入れなくなります。
1つずらすと、後ろが一緒に動く動きを試す 工務店向けに作った工程表のデモです。機械ではなく職人と現場の割り付けですが、「同じ日に同じ人を取り合っていたら警告する」「1工程ずらすと後工程も一緒に動く」「割り付けた結果をそのまま印刷する」という中身は、機械の割り付けとまったく同じ作りです。ブラウザだけで動き、入力したデータは端末の中だけに残ります。作るもの:3段階に分ける
第1段階:機械の表に「できる条件」と「段取り時間」を持たせる
機械1台につき1行。号機名、最大寸法、扱える材質、精度、そして段取り替えの標準時間を持たせます。段取り時間は、品番が変わるときと、同じ品番の続きのときで違うので、2つ持たせておくと後が楽です。
この段階だけでも、品名と寸法を入れると「流せる号機」が絞り込まれる画面になります。ベテラン以外が割り付けを見ても、無理な機械を選ばなくなります。ここはライトプランの範囲で、48時間で出せます。
条件の数字は、最初から完璧である必要はありません。3か月使って「この号機はもう少し大きいのも入る」と分かったら、そこで直せばよいものです。直すこと自体を前提に作ります。
第2段階:仕掛かりを機械に並べて、空く日を出す
受注済みで、まだ終わっていない仕事を機械ごとに縦に並べます。各行に、加工時間の見込みと段取り時間を持たせ、上から足していくと「この号機は◯日◯時に空く」が出ます。やっているのは足し算だけです。難しいのは計算ではなく、足す材料が今までどこにも揃っていなかったことのほうです。
この段階から、取り合いが画面に出ます。同じ号機に2件が同じ週に入ると、後から入れたほうが自動で後ろにずれ、その分だけ納期が動いて表示されます。ずらすか、別の号機に振るか、外注に出すかは人が決めます。決めるのは人ですが、決める材料が揃っている状態にします。
第3段階:現場が終わりを押すと、後ろが動く
現場のタブレットかスマホで、着手と完了を押します。文字は打ちません。押した時刻が実績になり、予定より早ければ後ろが前に詰まり、遅ければ後ろが一緒に下がります。下がった結果、納期に間に合わなくなる案件だけが一覧の上に出ます。
ここまで来ると、実績が自然に溜まります。見込み2時間の仕事が毎回3時間かかっているなら、見積の時間そのものが間違っていると分かります。この突き合わせは見積と実績の記事で書いた話と同じで、同じデータが両方に効きます。
よくある質問
受注の量が読めないので、予定を立てても崩れます
崩れる前提で作ります。予定表の値打ちは「当たること」ではなく、崩れたときに何がどう動くかがすぐ分かることです。飛び込みが1件入ったとき、どの号機に入れればどの案件が何日ずれるか。これが5分で出るなら、飛び込みを受けるかどうかをその場で判断できます。いまは受けてから現場が困ります。
機械が5台しかありません。頭に入っています
入っているなら、急ぎません。ただし「その人が休んだ日に、誰も答えられない」のと、その人が現場に出ている時間帯は返事が止まるのは、台数とは別の問題です。5台でも、答えられる人を2人に増やしたいなら効きます。逆に、機械が1台で品番も数種類なら、作っても変わりません。そういう場合は、そう申し上げます。
手仕事や外注の工程が間に挟まります
同じ並びに入れます。外注に出す工程は、機械の代わりに「外注先」を1つの資源として扱い、出す日と戻る予定日を持たせます。外注の往復を予定から外すと、見込みが必ず甘くなります。出しっぱなしに気づかない問題については外注工程の記事に書きました。
生産管理ソフトがあります
あるならそちらを使います。実際に足りていないのは、たいてい「機械ごとのできる条件」と「電話口で叩ける入口」の2つです。受注データはCSVで受け取り、この2つだけを外に作る形にできます。考え方はパッケージの外に残る仕事と同じで、中心のデータは元のソフトに置いたままにします。
加工時間の見込みを持っていません
最初は「この品番はだいたい半日」程度で構いません。第3段階で実績が入ると、見込みは自動で直せます。正確な標準時間を作ってから始めようとすると、たいてい始まりません。荒い数字で回し始めて、使いながら細かくするほうが早く効きます。
現場がタブレットを押してくれるか不安です
1回の操作が2タップで終わらないなら押されませんので、そこに全部を寄せます。着手と完了だけ。不良や停止の理由は後から事務方が足せる形にします。押されない原因はたいてい「押す項目が多い」ことで、やる気の問題ではありません。第2段階までは事務方の入力だけでも動くので、現場の入力は後から足す順番にできます。
データは誰が持つのですか
御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(機械の表、条件での絞り込み、段取り時間、印刷とCSV)はライトプランの範囲です。仕掛かりを並べて空く日を出す、複数人が同時に割り付ける、現場から着手・完了を押す——このあたりはスタンダードになります。号機の追加や条件の見直しは保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
「いつ出せますか」に、電話口で答えられる状態にします
いまお使いの機械の一覧を1枚(客先名と品番は伏せていて構いません)と、よく聞かれる納期の質問がどんなものか。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。機械が1台で品番も数種類なら、この画面は効きません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
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