販売管理ソフトを入れたのに、Excelが減らない
受注も、在庫も、請求も、販売管理ソフトに入っている。何百万円かけて入れて、移行にも半年かかった。それなのに、隣の席のPCでは今日もExcelが開いています。ファイル名は「見積_2026」「工程表_最新」「〇〇さん提出用」。ソフトを入れたら減るはずだったものが、むしろ増えている。
この記事は、そのExcelの正体を分けて考える話です。先に結論を書きます。残っているExcelは、ソフトが手を抜いたから残っているのではありません。パッケージは「どの会社でも同じ形の仕事」を速くする道具で、会社ごとに形が違う仕事は、はじめから入っていないだけです。問題は減らないことではなく、外に残った仕事がどれなのかを、誰も一覧にしていないことのほうにあります。一覧にすると、そのうち何割かは「ソフトの標準機能に実はある」もので、何割かは「そのままでいい」もので、本当にツールにすべきものは思ったより少ない、というのがだいたいの結末です。
残るExcelは、かならず3か所のどれかにいる
パッケージの外に残っている仕事は、位置で見ると前・後・横の3つに分かれます。どれに当たるかで、対処の仕方も費用も変わります。
| 位置 | よくある中身 | なぜソフトに入っていないか |
|---|---|---|
| 前段 ソフトに入力する前。 受注が決まる前に動く | 引き合いの記録、都度見積、現地の採寸、仕様のすり合わせ、試作可否の判断 | ソフトの入口は「受注」。まだ決まっていないものは登録できないか、登録すると売上見込みの数字に混ざる |
| 後段 ソフトから出した後。 相手に渡すまでに動く | 得意先ごとの納品書の様式、検査成績書、明細の組み替え、請求内訳の作り直し | 標準の帳票は原則1種類。相手ごとに様式を増やすのは帳票の追加開発になる |
| 横 ソフトと関係なく 毎日動いている | 工程の割り付け、進捗、外注に出した分の戻り待ち、日報、シフト | 工程の切り方も呼び名も会社ごとに違う。パッケージが持てるのは最大公約数の部分だけ |
自社のExcelを1つ思い浮かべて、前・後・横のどれかに置いてみてください。たいてい迷わず決まります。決まらない場合は、そのファイルが2つの用事を兼ねている(見積の控えと工程表を1枚でやっている、など)ときで、それ自体が分けたほうがいい合図です。
いちばん大きいのは、たいてい「前段」
3つのうちどれが重いかは業種によりますが、受注生産の会社ではほぼ前段です。理由は単純で、受注1件の裏に、引き合いが3件も5件もあるからです。ソフトが記録しているのは、そのうち通った1件だけ。通らなかった分の見積も、そこで使った単価の根拠も、ソフトの外にあります。
ここで効いてくるのが、前段の仕事は特定の1人のExcelに入っているという点です。単価表の中に、その人だけが知っている係数が埋まっている。材質と数量からいくらになるかを、10年やってきた勘とVLOOKUPの組み合わせで出している。その人が休むと見積が止まる、というのは、この形になっている会社ではほぼ必ず起きます。ソフトを入れても止まり続けるのは、そもそもソフトがその仕事を持っていないからです。
もう一つ、前段は速さがそのまま受注率に効く場所でもあります。後段や横の改善は社内の時間が浮きますが、前段は「翌日出していた見積をその場で出せる」に変わります。どこから手を付けるか迷ったときは、前段を先に見てください。
前段の形を見る(都度見積のデモ) 品目と数量を入れると単価表から金額を組み立て、そのまま印刷・PDFにできるところまで動きます。過去の見積が一覧で残るので、同じ得意先に前回いくらで出したかを探し回らずに済みます。ソフトの外に置いても、確定した分だけをCSVで受注として渡せば二重管理にはなりません。「カスタマイズすればいい」がうまくいかないとき
販売管理ソフトの多くはカスタマイズを受け付けています。ではなぜ、外にExcelが残り続けるのか。断られているわけではなく、たいていは次の4つのどれかで見送りになります。
| 見送りになる理由 | 実際に起きていること |
|---|---|
| 小さい改修でも金額が大きい | 画面1枚でも、要件の確認・影響範囲の調査・既存機能が壊れていないかの再テストが必ず付きます。作業そのものより、この固定でかかる分が大きい |
| バージョンアップで作り直しになる | 本体が上がるたびに追加部分の手直しが要ります。それを避けるために、バージョンアップを止めている会社もあります |
| ソフトを替えるときに道連れになる | 本体を入れ替えると、その上に作ったものはまるごと作り直しです。数年に一度、同じ費用を払うことになります |
| まだ形が決まっていない | 「やってみないと運用が決まらない」仕事をカスタマイズで作ると、変えるたびに見積が出ます。結果、変えなくなります |
逆に、カスタマイズで直すべきものもはっきりしています。ソフトの中心にあるデータ——品目、取引先、受注、売上、在庫——に関わるものです。ここを外のツールで持つと、必ず二重管理になり、どちらが正しいのか分からない状態になります。中心のデータは中に、そのまわりの「会社ごとに違う手順」は外に。この線引きが基本です。
ソフトの会社に先に聞いたほうがいいこと
外に作る話をする前に、代理店やサポート窓口に次の3つを聞いてみてください。ここで解決するなら、それがいちばん安い解決です。
- 今やっている作業が、標準機能でできるようになっていないか(設定していないだけ、というのは本当によくあります)
- 受注・品目・取引先のCSV書き出しと、CSV取り込みができるか。できる場合、その列の仕様書をもらえるか
- 帳票の様式を利用者側で追加できる仕組みがあるか(あるソフトも多い)
2番目の答えは、外にツールを作る場合にもそのまま必要になります。どちらに転んでも聞いておいて損はありません。
1週間の棚卸しで、外に残った仕事を一覧にする
ここからは実際の手順です。特別な道具は要りません。紙1枚か、共有のスプレッドシート1枚で足ります。
やること:Excelを開いた「そのとき」だけ1行足す
まとめて思い出そうとすると必ず漏れます。開いた瞬間に1行書くのがコツです。1週間だけ、事務所の全員でやります。書く項目は5つ。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| ファイル名 | そのまま。同じ名前が何度も出てよい(回数が見えます) |
| 何のために開いたか | 「A社の見積を作る」「納品書を得意先の様式に直す」など一言 |
| 前・後・横 | ソフトに入れる前か、出した後か、ソフトと関係なく毎日動いているか |
| 誰が持っているか | そのファイルを作れる人。1人しかいないなら、その名前だけ |
| かかった時間 | 5分刻みの目分量でよい |
1週間後の仕分け:3つの箱に入れる
集まった行を、次の3つに分けます。この棚卸しの目的の半分は、ツールにしないものを先に外すことです。
| 箱 | 入る条件 | 次にすること |
|---|---|---|
| ソフトに戻す | 標準機能にあるのに使われていない。設定していないだけ、教わっていないだけ | 代理店・サポートに聞く。費用はかからないか、ごく小さい |
| そのままでいい | 月1回以下・1人で完結・5分で終わる | 何もしない。ツールにしても回収できません |
| 外でツールにする | 前・後・横のどれかで、週に1回以上開くか、2人以上が触るか、特定の1人しか作れない | 合計時間の大きい順に1つだけ選ぶ |
3番目の箱に10個も20個も入ることがありますが、最初に作るのは1つだけにしてください。1つ動かしてみると、思っていたのと違う場所が面倒だった、ということが必ず出てきます。それを2つ目に反映するほうが、まとめて作るより結局速く終わります。
つなぎ方はCSVで足ります
「外にツールを作ると、ソフトと連携させるのが大変なのでは」というご質問をよくいただきます。中小企業の規模では、ほとんどの場合CSVの受け渡しで足ります。APIをつなぐ工事は要りません。
| 向き | 渡すもの | 頻度 |
|---|---|---|
| ソフト → ツール | 品目マスタ、取引先マスタ、単価 | 月1回か、変えたとき。マスタは毎日変わりません |
| ツール → ソフト | 確定した受注、確定した売上 | その都度、または1日1回まとめて |
取り込み機能が無いソフトの場合でも、入力画面の並び順どおりに値を表示して、コピー&ペーストで入れられるようにするだけで、打ち直しはほぼ無くなります。実際、これで十分だったお客様の業務もあります。どちらにするかは、最初のご相談でソフト名とCSVの仕様を伺って決めます。
そしてもう1つ、必ず決めておくことがあります。どちらが正か、を項目ごとに決めることです。品目と取引先はソフトが正、引き合い中の見積はツールが正、確定した受注はソフトが正。この線を引いておかないと、両方に入っていてどちらが新しいのか分からない、という一番まずい状態になります。線を引くのは技術の話ではなく、運用の取り決めです。
作るときは2段階に分かれる
第1段階:1つの仕事を1画面にする(ライトプラン)
棚卸しで選んだ1つを、そのままの手順で画面にします。今のExcelの列と、実際に使っている計算式が出発点です。Excelを1枚お送りいただければ、こちらで読んで作ります。印刷・PDF出力とCSVの入出力、スマホ対応は標準で入ります。ソフトとのやりとりは、この段階ではCSVの書き出し・読み込みまでです。前段の見積、後段の様式差し替え、いずれも多くはこの範囲で収まります。
第2段階:複数人で使い、記録が貯まる形にする(スタンダードプラン)
横の仕事——進捗、外注の戻り待ち、工程の割り付け——は、1人で完結しないのでこちらになります。データを貯める仕組みとログイン(合言葉かメールのリンク)を付け、現場からスマホで入力できるようにします。画面は3〜6枚、通知や、ソフトとのCSV自動連携もこの範囲です。
順番としては、前段か後段の1つを第1段階で作って、実際に回してから横に手を付けるのをおすすめしています。横の仕事は関わる人数が多く、いちばん「使われないまま終わる」危険が高い場所だからです。
よくある質問
ソフトの販売会社に嫌がられませんか
これまでのところ、その心配はほとんど要りません。理由は、ソフトの中に手を入れないからです。データベースを直接見に行くことも、本体のファイルを書き換えることもせず、CSVを書き出していただくだけです。保守契約やサポート範囲に触れる形にはなりません。むしろ、代理店の方から「標準機能の外なので手が出せなかった部分」としてご相談をいただくこともあります。ご不安であれば、ソフトの会社にも同席いただいた場で仕様をお話しします。
使っているソフトの名前を言えば、できるか分かりますか
だいたい分かります。確認したいのは製品名そのものより、CSVの書き出しができるか、その列に何が入っているかです。書き出したCSVを1本お送りいただければ(数字は消していただいて構いません)、つなげるかどうかをその場でお答えします。書き出せない場合でも、画面のコピー&ペーストか、印刷したPDFからの読み取りで回る例はあります。できない場合は、できないとお伝えします。
ソフトを乗り換えたほうがいい場合はありますか
あります。前・後・横の3つとも大きい場合、それはソフトが業種に合っていない可能性が高いです。たとえば個別受注の工場に、量産向けの生産管理を入れているようなときです。この場合、外にツールを足していくと、いつまでも継ぎ足しが続きます。私たちの仕事にならなくても、その旨は正直にお伝えします。棚卸しの結果をお見せいただければ、その判断まで含めてご相談に乗ります。
結局、入力が2回になりませんか
設計を間違えるとなります。防ぐ考え方は1つで、同じ項目を2回「人が打つ」場面を作らないことです。前段のツールで作った見積が受注に変わったら、その内容がCSVでソフトに渡る。人が打つのは1回目だけです。逆に、ツールとソフトの両方に人が入力する設計になっていたら、それは分け方を間違えています。ご相談の段階で、どの項目をどちらが持つかの表を1枚お作りします。
Excelのままで足りると言われることはありますか
あります。棚卸しの「そのままでいい」箱に入るものはもちろん、ツールにする箱に入っていても、関数を少し直せば済むケースや、ソフトの設定を変えれば済むケースがあります。その場合はそのようにお伝えします。見積を出す前の段階で分かることが多いので、費用は発生しません。
販売店・会計事務所ですが、お客様の話として相談できますか
できます。業務ソフトの販売代理店、税理士・社労士事務所、ITサポートの会社の方から、顧問先・納品先の「ソフトの外に残った作業」をご相談いただく形は歓迎しています。成約額の10%を紹介料としてお支払いし、1件目のデモ制作は無償で行います。ソフトの入れ替えを提案するものではないので、既存の商流と競合しません。詳しくは提携パートナーのご案内をご覧ください。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
前段・後段の1つを画面にする第1段階はライトプランの範囲です。CSVの書き出しと読み込みもこの中に入ります。複数人で使い、記録を貯め、ソフトとのCSV連携を自動で回す場合はスタンダードになります。いずれも初期費用のみで、月額の利用料はかかりません。販売管理ソフト本体には触れないので、そちらの保守費用が増えることもありません。様式の追加やCSVの列の変更は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
ソフトの外で開いているExcelを1枚、送ってください
お使いのソフト名と、その横で開いているExcelを1枚。それだけで十分です。そのExcelが前・後・横のどれで、ソフトの標準機能で片づくのか、外に作るべきなのか、画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。CSVの書き出し見本を添えていただけると、つなぎ方まで具体的に書けます。ソフトの設定や関数の手直しで足りると判断したときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
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