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「あの仕事、儲かってたんですか」

2026年9月16日 / 48時間ツール工房 / 見積の時間と、実際にかかった時間

見積を出します。受注します。作ります。納めます。請求します。そこで、その仕事は終わります。その品物が見積どおりの時間で上がったのかは、誰も見ません。日報には時間が書いてあります。書いてあるのに、集計されません。半年後、同じ客先から似た品物の引き合いが来て、また勘で出します。

先に結論を書きます。実績の工数が出ないのは、現場が日報を書いていないからではありません。書かれた時間が「誰の1日」の形をしていて、「どの仕事」の形になっていないからです。山田さんの8時間は記録されています。その8時間が、工番のどれに何時間ずつ入ったのかが記録されていません。この1点だけを直すのが、この記事の話です。

日報に時間が書いてあるのに、原価が出ない3つの理由

1. 時間が人に付いていて、仕事に付いていない

多くの日報は「出勤7:50/退勤17:30/残業1.5h」の形です。これは給与のための記録で、正しく運用されています。ただしこの形からは、その日に流れた5つの工番に何時間ずつ入ったかが出ません。作業欄に「○○加工」と書いてあっても、何時から何時までかが無いので、合計8時間に割り戻せません。集計しようとした人が最初にぶつかるのがここで、たいていここで止まります。

2. 段取りと加工が一緒になっている

単品や小ロットの加工では、段取りが総時間の半分を超えることが珍しくありません。治具を組んで、芯を出して、プログラムを直して、試し削りをする。ここまでで4時間、削るのは1時間。次に同じ品番が来たときは段取りが30分で済みます。この2回を同じ「5時間」「1.5時間」として記録すると、次の見積で必ず外します。1個だけなら5時間、10個なら段取り30分+加工10時間——この違いは、段取りと加工を分けて記録していないと出せません。

3. 見積の側に「何時間で見たか」が残っていない

見積書に残るのは金額です。その金額をどう作ったか——加工8時間×賃率+材料+外注——は、担当者のExcelか、頭の中にあります。突き合わせる相手がいないので、実績だけ集めても比べられません。実績工数の仕組みが続かない会社の多くは、実は実績側ではなく見積側が空っぽです。時間を集めたのに「で、これは多いんですか少ないんですか」と言われて終わります。

この3つに共通していること

どれも、原価管理をしていないという話ではありません。記録が、給与と請求のために作られているというだけです。給与のための記録は人単位で正しく、請求のための記録は品物単位で正しい。その2つの間に、「この仕事に何時間入ったか」という記録だけが無いのが、いま起きていることです。

やりたいのは、原価計算ではありません

ここを取り違えると、まず続きません。欲しいのは「工番1042:見積8時間、実績14時間、差+6時間」の1行です。間接費の配賦、部門別の賃率、仕掛の評価——制度会計の原価計算は、別の目的のための、別の仕事です。あれを目指すと、始める前に「賃率をどう決めるか」の議論で半年かかります。

実際に効くのは、次の3つだけです。

この3つは、賃率が多少ずれていても成り立ちます。時間で見ている限り、賃率の議論を後回しにできる——これが、時間から始める最大の理由です。前回いくらで出したかを引く話は再受注の見積の記事に書きましたが、あちらが「金額を引く」のに対して、こちらはその金額が妥当だったかを後ろから確かめる話です。

作るもの:3段階に分ける

第1段階:見積のときに、時間を1つ残す

最初にやるのは実績側ではなく、見積側です。見積を出すときに、段取り時間と加工時間の2つを入力して保存します。それだけです。今お使いの見積Excelはそのままで構いません。工番・品番・数量・段取り見込み・加工見込みの5列を持つ画面を1枚作り、見積を出したときに1行入れます。

1件30秒です。そして、この30秒は実績が集まるまで何の役にも立ちません。ここが続かない理由なので、見積書を作る画面そのものに埋め込んで、別作業にしないのが要点になります。

第2段階:実績を、人ではなく工番に付ける

現場の入力です。方法は2つあり、会社によってどちらが続くかが分かれます。

どちらでも、入力は現場の端末で完結させます。事務方がまとめて入力する形にすると、現場の記憶が薄れた分だけ数字が丸まり、「だいたい3時間」ばかりが並びます。この構造は日報の転記の記事と同じで、書く場所と作業の場所が離れた瞬間に精度が落ちます。

現場がその場で数字を入れて、集計がひとりでに出る動きを試す 町工場向けに作った日次生産記録のデモです。良品数と不良数を入れると、多い順の並びと理由の内訳がその場で出ます。工数の画面そのものではありませんが、「現場が1件ずつ入れる」「入れた数がひとりでに集計に乗る」「印刷とCSVで外に出せる」という作りは同じです。ブラウザだけで動き、入力したデータは端末の中だけに残ります。

第3段階:差の大きい順に並べて、見積に返す

見積と実績が揃うと、一覧が差の大きい順に並びます。ここで見たいのは平均ではありません。平均は、当たった仕事と外した仕事を打ち消し合って、いつも「だいたい合っている」に見えます。並べるのは外れ幅の大きい順で、上から20件を月に1回眺めます。

そこに同じ客先が3件並んでいたら、その客先の図面に共通の読み違いがあります。同じ工程が並んでいたら、その工程の標準時間が古いということです。そして次に似た品番の引き合いが来たとき、見積の画面に「前回:見積8時間/実績14時間」が出ます。ここまで来ると、第1段階で入れた30秒が初めて効きます。

逆に、期待しないほうがいいこと

よくある質問

現場が時間を書いてくれません

書かれない形になっていることがほとんどです。確認する点は3つあります。入力が1日1回30秒で終わるか。工番が選択肢から選べるか(手で番号を書かせていないか)。入れた本人に何か返っているか。3つ目が抜けている会社が多いです。入れた時間が事務所に吸い込まれて何も返らないと、半年で形骸化します。「今日入れた工番の、前回の実績」をその場に出すだけで変わります。

1日に何件も掛け持ちします。5分刻みで書けません

刻まなくて構いません。0.5時間単位で十分です。15分の中断まで拾おうとすると、入力の負担が成果を超えます。1日の終わりに「工番1042に3時間、1055に2時間、あとは雑用」で足ります。合計が拘束時間と大きくずれたときだけ画面が知らせる形にすれば、書き忘れは見つかります。

段取りと加工は、必ず分けるべきですか

単品・小ロットなら分けてください。ここを分けないと、数量が変わったときの見積が作れません。逆に、同じ品番を毎月同じ数だけ流す量産だけの会社なら、分けなくても実用になります。御社がどちらかは、見積の数量欄に「1」や「3」が多く出るかどうかで判断できます。

機械の稼働時間と、人の時間が違います

違います。長尺の自動運転中に人は別の機械を見ているので、機械時間と人時間は別の列にします。見積の側も、機械占有で見るのか人の手当てで見るのかが品物によって変わるはずです。最初は人の時間だけで始めて構いません。機械時間は、機械の取り合いが問題になっている会社で後から足します。

手直し・やり直しの時間はどう扱いますか

同じ工番に付けたうえで、手直しの印を1つ付けます。分けて記録しないと「その仕事は何時間かかったか」が出ませんし、混ぜたままだと「なぜ外したか」が出ません。印を付けておくと、外れ幅の大きい上位20件のうち何件が手直し起因かがすぐ分かります。その内訳は不良とクレームの記録の記事の側と自然につながります。

生産管理ソフトに日報の機能があります

あるなら、そちらを使ってください。足りないのはたいてい「見積時間を残す場所」「見積と実績を並べた一覧」の2つです。実績はCSVで受け取り、その2つだけを外に作れば足ります。中心のデータを移す必要はありません。この線引きはパッケージの外に残る仕事と同じ考え方です。

賃率はいくらにすればいいですか

この質問が出たら、金額換算はいったん止めてください。時間のまま第3段階まで進めて、半年溜めてから決めるほうが早く着きます。どうしても金額が要る場合は、まず一本の賃率で始めます。機械別に分けるのは、機械ごとの取り合いや投資判断が実際に議題になってからで間に合います。最初から精密に決めようとすると、その議論が終わる前に現場の入力が止まります。

個人の成績に使われるのでは、と現場が心配しています

もっともな心配で、実際に評価へ使うと数字は必ず壊れます。遅れた人が時間を少なく書くようになり、その瞬間からこの仕組みは何の役にも立たなくなります。ですので、画面は工番単位で集計し、人別の合計を出す画面を作らないのが安全です。作れないのではなく、作らないことを先に決めて現場に伝えます。「見るのは仕事であって人ではない」と最初に言い切れるかどうかが、この仕組みが続くかどうかを決めます。

まず何から始めればいいですか

次に出す見積10件に、段取りと加工の見込み時間を書き添えることから始めてください。紙でもExcelでも構いません。その10件が納まる頃に、実績と突き合わせてみると、御社の外れ方の癖が見えます。それを見てから道具を作っても遅くありません。むしろ、癖が分かっている状態で作ったほうが、画面が小さく済みます。

データは誰が持つのですか

御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。工数と金額は客先との取引条件に直結するので、扱いには特に気をつけます。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

第1段階と、1人で使う実績入力(工番一覧、見込み時間の記録、1日分の割り振り、印刷とCSV)はライトプランの範囲です。複数人がそれぞれの端末から入れて誰が入れたかを残す、生産管理ソフトの実績をCSVで取り込む、差の大きい順の一覧と次回見積への引き当てまで——このあたりはスタンダードになります。工番の桁数の変更や、段取り区分の追加は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。

「見積8時間、実績14時間」が、次の見積のときに出てくる状態にします

いまお使いの見積書を1枚と、日報を1枚(客先名と品番は伏せていて構いません)。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。同じ品番の繰り返しがほとんど無く、毎回まったく違う物を作っている会社では、実績を溜めても次に返る先がありません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。

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