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「その不良、去年も出ていました」

2026年9月14日 / 48時間ツール工房 / 不良とクレームの記録

客先から連絡が入ります。寸法が外れていた、面にキズが付いていた。品証が現品を確認し、是正処置報告書を書きます。発生状況、原因、対策、水平展開。様式どおりに埋めて、期限までに提出します。半年後、同じ品番で、ほとんど同じ不良が出ます。前回の報告書は共有フォルダのどこかにあります。探せば出てきます。ただ、出る前に探した人はいませんでした。

先に結論を書きます。不良を「書類」として残している限り、再発は見つかりません。報告書は提出するための単位で、数えるための単位ではないからです。必要なのは1件1ファイルのPDFではなく、品番・工程・不良名の3つで引ける1行です。そして引くのは不良が出た後ではなく、次の注文を受けたときです。順番に説明します。

記録はあるのに、再発が見つからない3つの理由

1. 1件1ファイルになっている

是正処置報告書は、客先に出すための書類です。1件ごとにExcelやWordのファイルができ、年度のフォルダに日付順で溜まります。この形は提出には最適ですが、「この品番で過去に何があったか」を出す手段がありません。ファイル名に品番を入れる決まりがあっても、品番の表記が図面番号だったり客先の管理番号だったりで揺れます。結局、全文検索で当たりを探すことになり、忙しいときにはやりません。

2. 不良名が自由記述になっている

台帳の形になっている会社でも、不良の内容の列はたいてい自由入力です。すると同じ現象が「バリ」「バリ大」「バリ残り」「返り取れず」と4通りに書かれます。同じ不良が4件に割れるので、件数で並べても上位に出てきません。上位に出てくるのは、たまたま同じ言い方で3回書かれたものです。数え方の問題が、優先順位の問題に化けています。

3. 社内で見つけたぶんが残っていない

客先に出てしまったものは、報告書になるので必ず記録が残ります。いっぽうで工程内で見つけて作り直したもの、出荷前検査で止めたものは、日報の隅に「手直し2個」とだけ書かれて終わります。止められたのだから、それでいいという扱いです。ところが再発の前兆はここにあります。3回止めていて4回目にすり抜けたのなら、3回ぶんの兆しが記録の外にあったことになります。客先に出たものだけを集めた台帳は、いちばん遅い警報です。

この3つに共通していること

どれも「記録をサボっている」話ではありません。記録を作ることと、記録を引けることが別の仕事だというだけです。いまある記録は、書く側と提出する側の都合に合わせて作られています。引く側——次に同じ品番を作る人——の都合で作られた形が、どこにもありません。

引くタイミングは、出た後ではありません

不良の記録を見返すのは、たいてい客先から連絡が来た後です。そこで前回の報告書が見つかっても、できるのは「前回と同じ原因でした」と書くことだけで、もう出てしまっています。効くのは、その品番の注文を受けた瞬間です。

受注を入れたとき、あるいは工番を立てて図面を出すときに、その品番の過去が1画面に出ます。

「前回は面取りの指示を読み違えて2個作り直した」が段取りの前に見えれば、その1行だけで足ります。是正処置の「水平展開」が実際に効くのはここです。水平展開の内容が文書として承認されて終わっていると、次にその品番を回す人には届きません。届く場所は、朝に開く品番の画面だけです。

ここは支給図面の改訂の記事と同じ構造です。正しい情報がどこかに存在していることと、作業する人の目に入ることは、別のことです。

作るもの:3段階に分ける

第1段階:見つけたら1行(数えられる形にする)

1件について、次を持ちます。発生日・品番・工番・工程・不良名(選択式)・数量・見つけた場所(工程内/出荷前検査/客先)・処置(手直し/廃棄/特別採用)・原因の区分(材料/加工/段取り/図面解釈/測定/外注)。写真を数枚ぶら下げます。

発生日品番工程不良名見つけた場所処置
09/02C-12フライスバリ残り2出荷前検査手直し
09/05C-12フライスバリ残り1工程内手直し
09/11D-3研磨寸法外れ1客先(A社)廃棄

大事なのは不良名を選択式にすることだけです。現場が実際に使っている言葉を20個ほど並べて、そこから選ばせます。選択肢を増やせるのは管理者だけにします。自由入力を1つ残すと、そこに全部が流れて元に戻ります。どうしても当てはまらないときのために「その他」+備考を置き、月に一度、管理者が「その他」を見て選択肢に昇格させます。

入力は、見つけた人がその場でやります。品番を選び、工程を選び、不良名を選び、数を入れる。増える手間は3タップと数字1つで、それ以上にすると入力が止まります。入力が止まった台帳は、数字が減ったように見えるので、改善したのと区別が付きません。現場に増やしてよい入力は1日ひとつまで、というのは日報の転記の記事でも書いたとおりです。

第2段階:品番から引く(受注と段取りで見る画面)

品番を入れると、その品番の過去の不良、そのとき決めた対策、同じ工程の他品番での不良が並びます。工番の画面から品番をたどって開ける形にします。件数の多い順ではなく、新しい順に並べます。前回どうだったかを見る画面なので、統計ではなく履歴です。

この画面ができると、初めて「同じ不良が去年も出ていた」が出る前に分かります。第1段階で不良名を統一してあるので、件数も割れません。工番の進み方そのものを画面にする話は工番の追い方の記事にあります。

第3段階:報告書を記録から出す

客先に出す是正処置報告書は、記録の行から様式に流し込みます。発生状況・数量・処置は入力済みなので、人が書くのは原因と対策の文章だけです。書類を先に作って記録を後から拾うのをやめて、順番を逆にします。客先ごとに様式が違うなら、よく使う2〜3社ぶんをテンプレとして持ちます。

第3段階は後回しで構いません。第1段階と第2段階だけで、再発は見つかるようになります。第3段階は書く手間を減らすための話なので、記録が溜まってから作れば足ります。

逆に、期待しないほうがいいこと

よくある質問

不良名の分類を決められません

最初から正しい分類を作ろうとすると止まります。過去1年の報告書と日報から、実際に書かれていた言葉をそのまま20個ほど拾ってください。重複していても構いません。運用しながら、月1回「その他」を見て足したり統合したりします。分類の設計は始める条件ではなく、使いながら決まるものです。並べ替えのために最初から要るのは、同じ現象に同じ札が付くことだけです。

ISOの審査で出せる形式でないと意味がありません

様式は変えません。いまお使いの是正処置報告書のレイアウトのまま、印刷とPDFで出せるようにします。台帳も同じで、いまのExcelの列の並びに合わせてCSVで書き出せます。審査の場で「Excelでください」と言われることもあるので、そこは残します。

客先ごとに報告書の様式が違います

よく出す客先の様式を2〜3種類テンプレとして持ち、客先を選ぶと切り替わる形にします。全社ぶんは要りません。年に1回しか出さない客先は、記録の画面から数字を見ながら手で書いたほうが早いです。

誰が入力するのですか

不良を見つけた人です。検査員でも、加工している人でも、組み立てている人でも同じ画面を使います。スマホで、品番・工程・不良名を選んで数を入れるだけにします。品証がまとめて入力する形にすると、思い出しながら入れることになり、工程内で止めたぶんが落ちます。落ちるのは、いちばん価値のある前兆のほうです。

写真は必要ですか

あると後で助かります。文字で「キズ」と書いた1年前の記録は、程度が分かりません。スマホで撮ってその場で1件にぶら下げる形にしておくと、客先との「これは不良か」のやりとりが1往復で済みます。現品を取り置きする決まりがある会社でも、写真は別に撮っておいたほうがいいです。

生産管理ソフトに不良の入力欄があります

あるなら、そちらに入れて構いません。足りないのはたいてい「不良名の統制」「品番から過去を引く画面」の2つです。その2つだけを外に作り、不良のデータはCSVで受け取る形にできます。考え方はパッケージの外に残る仕事と同じで、中心のデータは元のソフトに置いたままにします。

不良をゼロにするのが本筋で、記録を増やす話ではないのでは

そのとおりです。記録は目標ではなく道具です。ただ、どの不良から手を付けるかを決めるには、同じ現象が同じ札で数えられていることが先に要ります。いま件数の上位に出ているのが「たまたま同じ言い方で書かれた不良」なら、手を付ける順番がそこで狂います。作るのは、順番を間違えないための材料です。

過去の紙の報告書は取り込めますか

全部は取り込みません。直近1〜2年ぶんの「品番・日付・工程・不良名・数量」の5列だけを、Excelか手入力で移します。原因と対策の文章は、元のファイルをその行にぶら下げれば足ります。第2段階の画面は、5列があれば機能します。紙をすべてデータにするのは目的ではないので、そこに時間を使わないほうがいいです。

データは誰が持つのですか

御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。不良の記録は客先に見せるものが含まれるので、扱いには特に気をつけます。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

第1段階(1行記録、不良名の選択肢、写真、印刷とCSV)と、品番から引く一覧まではライトプランの範囲です。複数の現場から入力して人ごとに記録を残す、客先ごとの報告書テンプレを持つ、生産管理ソフトのデータと突き合わせる——このあたりはスタンダードになります。不良名の選択肢の追加や様式の変更は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。

「前回この品番で何があったか」が段取りの前に出る状態にします

いまお使いの是正処置報告書を1枚(品番と客先名は伏せていて構いません)と、不良の内容に使っている言葉をいくつか。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。品番が毎回1品もので、同じものを二度作らないのなら、過去を引く画面は効きません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。

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