前はいくらで出しましたっけ
「去年うちで作ったやつ、また10個ほしいそうです」。営業からそう言われて、まず開くのは去年の案件フォルダです。お客様の名前で探して、日付で当たりをつけて、Excelを2つ3つ開いて、出した見積と、実際に受注した金額が違うことに気づいて、また探し直す。ここまでで20分。図面の版を確認して、材料の単価が今いくらかを調べて、結局その日のうちには返せません。
この記事は、自動見積の話ではありません。先に結論を書きます。2回目の見積に時間がかかるのは、計算が難しいからではありません。前回の見積が「品番で引けない形」で、案件ごとのフォルダに散らばっているからです。だから見積書のExcelをどれだけ作り込んでも速くなりません。速くなるのは、品番を入れたら、その品物の過去の見積が全部出てくるようになったときです。順番に説明します。
新規の見積と、再受注の見積は、別の仕事です
同じ「見積」と呼んでいますが、やっていることが違います。
| 新規の見積 | 再受注の見積 | |
|---|---|---|
| 中身 | 図面を読んで、工程と時間を組み立てる | 前回を探して、変わったところだけ直す |
| 時間の使い道 | 考える時間 | 探す時間 |
| 難しさ | 技術的に難しい | 技術的には難しくない |
| 失敗の仕方 | 読み違えて安く出す | 前回と違う値段を出して、指摘される |
会社によって差はありますが、引き合いの半分以上が再受注という部品加工の会社は珍しくありません。つまり見積にかけている時間の半分は、考える時間ではなく探す時間です。探す時間は、技術のある人がやっても速くなりません。ここが、ツールにして効く場所です。
なぜ探すのに時間がかかるのか
見積のExcelは、たいていきちんと作られています。問題はファイルの中身ではなく、置き方です。
- フォルダが客先と日付で切られている。「2025/A社/0312見積.xlsx」。品番はファイルの中にしか無いので、品番で探すと全ファイルを開くことになります
- 同じ品物の見積が何回も出ている。数量違い、仕様変更、値引き後。どれが最後に通ったものか、ファイル名からは分かりません
- 出した見積と、受注した金額が違う。電話で詰めた最終の金額が、Excelに戻っていないことがあります
- 担当が変わると、探し方が分からない。前任者のフォルダの切り方は、その人の頭の中にあります
この4つは、どれも「整理が悪い」せいではありません。案件を単位にしてファイルを置く限り、必ずこうなります。案件は一度きりのものですが、品番は何度も出てくるからです。
正しい持ち方は、見積を「品番」にぶら下げることです
案件フォルダをやめる必要はありません。足すのは、品番を鍵にした1本の表です。1行が1回の見積で、持つのは 品番・客先・数量・出した日・見積金額・受注したかどうか・受注した金額。同じ品番に10行ぶら下がって構いません。これだけあれば、品番を入れた瞬間に「この品物は過去5回出していて、直近は去年の3月に100個で単価いくら、受注は2回」が出ます。Excelでも作れますが、見積を出すたびに手で1行足すのが続きません。ツールにする値打ちがあるのは、見積書を作る操作そのものが、この1行を残すようにするところです。
前回の値段を、そのまま出すわけにはいきません
ここが再受注の見積のいやらしいところです。前回が見つかっても、そのまま出せない理由が必ずあります。
| 前回と違うところ | 値段への響き方 |
|---|---|
| 材料の単価が上がった | 材料費だけ動く。加工賃は据え置きでよいことが多い |
| 数量が違う | 段取り費の割り掛けが変わる。10個と100個で単価は別物 |
| 図面の版が上がった | 変わった寸法によっては工程が増える |
| 納期が短い | 外注の特急費用、休日出勤 |
だから必要なのは「前回いくらだったか」ではありません。「前回どういう内訳で、いくらだったか」です。材料費・段取り・加工時間・外注費が分かれて残っていれば、変わったところだけ差し替えれば済みます。合計金額しか残っていないと、結局ゼロから組み立て直すことになります。
内訳を残すのは、見積を作るときのひと手間です。合計だけ書いて出したほうがその日は速いのですが、次に同じ品番が来たときに、そのひと手間を必ず払わされます。再受注が多い会社ほど、内訳を残すほうが安く付きます。
「あのとき赤字だった」が、2回目に反映されない
もうひとつ、再受注の見積でよく起きることがあります。前回ひどい目にあったのに、同じ値段でまた受けてしまうというものです。
見積では3時間で見ていた加工が、実際は5時間かかった。段取りが思ったより面倒だった。バリ取りに人手がかかった。現場はそれを覚えているのですが、覚えているのは現場であって、見積を作る人ではありません。そして2年後に同じ品番が来たとき、見積を作る人が開くのは「前回出した見積」です。実際にかかった時間は、そこには書いてありません。
ここで「全部の品番の実績時間を取りましょう」と言うと、まず続きません。日報を細かく書かせる話になり、現場の手が止まるからです。日報の転記の記事でも書きましたが、現場に増やしてよい入力は1日ひとつまでだと考えたほうがいいです。
現実的な落としどころは、見積時間と実績時間の差が大きかった品番にだけ、印を付けておくことです。全部を測らなくても、「この品番は前回、見積の1.5倍かかった」という1行が見積の画面に出るだけで、2回目の値段は変わります。
品番から前回の内訳を引いて、見積書にするところを見る(見積作成のデモ) 単価と数量を入れると金額と合計が出て、印刷とCSVの書き出しまで動きます。再受注の形にする場合は、この画面の上に「品番で過去の見積を引く欄」が付き、選ぶと内訳がそのまま入った状態で始まります。今いちばん手間になっている作業をひとつ教えていただければ、その作業に合わせた試作画面を 1 枚、無料でお作りします。いきなり全部やらない。3段階に分ける
第1段階:見積を1本の表に貯める
持つ欄は 品番・品名・客先・数量・出した日・金額・受注の可否だけ。まず過去の見積を品番で引けるようにするところまでです。既存のExcelをCSVにして流し込めば、過去ぶんもそのまま乗ります。品番が入っていない古いファイルは、無理に遡らなくて構いません。これから出す見積が全部ここに乗れば、半年で使える表になります。
この段階でできるようになるのは1つ、「前に出しましたか」に数秒で答えることです。営業からの電話をいったん切らなくてよくなります。
第2段階:内訳を持って、見積書を出す
材料費・段取り・加工時間・外注費の欄を足して、この画面から見積書のPDFを出します。過去の見積を選んで複製すると、内訳が入った状態から始まります。変わったところだけ直して出せば、その操作がそのまま次の1行になります。単価表を持たせれば、材料費は今の単価で引き直せます。
第3段階:実績を戻す
受注した品番について、実際にかかった時間を戻します。全工程ではなく見積で時間を積んだ工程だけで十分です。差が大きかったものに印が付き、次に同じ品番の引き合いが来たときに画面に出ます。検査記録や工番の進捗を既にツールにしているなら、実績はそちらから引けます。
第1段階だけでも、探す時間はほぼ無くなります。先に第3段階から入らないでください。原価の振り返りをしたくて始める会社は多いのですが、振り返る相手は第1段階と第2段階の記録そのものです。比べる相手が無いところに実績だけ集めても、数字は出ません。
逆に、期待しないほうがいいこと
- 図面から自動で見積は出ません。3Dデータから加工時間を推定する仕組みは世の中にありますが、別の話です。ここでやるのは、人が積んだ数字を残して引けるようにすることだけです
- 原価計算システムにはなりません。労務費の配賦や間接費の按分は扱いません。見るのは「見積で積んだ時間」と「実際にかかった時間」の差だけです
- 値段が上がるわけではありません。上がるのは、値段の根拠を説明できる度合いです。客先に値上げをお願いするとき、前回からの材料単価の変化を出せるかどうかで話の進み方が変わります
- 過去のファイルは自動では読めません。Excelの様式が年ごとに違うのが普通なので、遡って取り込むのは品番・金額・日付くらいにとどめるのが現実的です
よくある質問
客先ごとに見積書の様式が違います
よくあります。中のデータは1つにして、印刷の様式だけ客先ごとに切り替える形にします。先方指定のExcelに書き出す必要がある場合は、その様式に流し込んで出すところまで作れます。様式の追加は保守の範囲(月2件までの改修)です。
同じ品物なのに、客先で品番が違います
自社の品番を鍵にして、客先ごとの品番を別欄で持ちます。どちらからでも引けるようにします。この対応表が頭の中にしか無い会社は多く、そこだけでも表にする値打ちがあります。担当が休んだ日に引き合いが来たときに効きます。
見積は社長が全部ひとりで作っています
その場合、第1段階の値打ちは「探す時間」より「社長以外も答えられるようになること」に寄ります。過去に出した金額が表にあれば、事務の方が「前回は去年3月に100個で出しています」まで答えられます。そこから先の判断だけ社長に回せば、一次返答が当日中に出ます。
販売管理ソフトに見積の機能があります
あるなら、見積書を作るのはそちらで構いません。足りないのはたいてい「品番で過去を引く」と「内訳を複製して直す」の2つです。その2つだけを外に作り、品番と客先はCSVでソフトから受け取る形にできます。考え方はパッケージの外に残る仕事と同じで、中心のデータはソフトに置いたままにします。
受注したかどうかを入れるのを忘れそうです
忘れます。なので、出した日から一定の日数が経って可否が入っていない見積を、画面に並べる形にします。まとめて片づけられるようにするのが現実的で、1件ずつ催促しても入りません。ついでに、返事の無い見積のフォローが1つ拾えます。これは受注の側にも効きます。
材料の単価表を作るのが大変です
全部は要りません。よく使う10種類か20種類だけ入れておけば、大半の見積は回ります。無い材料はその場で手入力する欄を残しておきます。単価表を完璧にしようとして止まるくらいなら、空のまま始めて、使いながら足すほうが早いです。
何人まで使えますか
見積を作る人が数人で、表を引くだけならライトプランの範囲です。現場から実績を戻し、客先別の様式で出力し、記録を貯めて同時に開く第2段階・第3段階はスタンダードになります。人数で追加の費用はかかりません。
データは誰が持つのですか
御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。見積の金額と内訳は取引条件そのものなので、扱いには特に気をつけます。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(見積を品番で引ける表にする、過去ぶんのCSV取り込み、書き出し)はライトプランの範囲です。内訳を持った見積書の出力、客先別の様式、実績時間の突き合わせまで入れる場合はスタンダードになります。既にお使いの販売管理ソフトはそのままで構いません。材料の単価表の追加や様式の追加は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
品番を入れたら、前回が出てくる状態にします
直近で出した見積のExcelを1つ(金額は消えていて構いません)と、よくある再受注の品物をいくつか。それだけで十分です。見積をどう持てば品番で引けるのか、画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。再受注がほとんど無く、毎回が新規の図面から始まるのなら、この仕組みは効きません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
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