メッキから、いつ戻るんですか
社内の工程は、ホワイトボードを見れば分かります。ところが熱処理に出した、メッキに出した、研磨に出した——外に出た瞬間だけ、進捗が誰にも見えなくなります。客先から「あの品、どうなってますか」と聞かれて、まず探すのは出荷伝票の控えで、次にかけるのは外注先への電話です。
この記事は、外注管理システムを入れる話ではありません。先に結論を書きます。外注が見えないのは、記録していないからではありません。「出した数」と「戻った数」が一致しない前提で作られた記録が、どこにも無いからです。だから出荷伝票の控えを綴じても直りません。直るのは、「今、外に何がいくつ出ていて、どれが約束の日を過ぎているか」が1画面で出るようになったときです。順番に説明します。
外注に出ている品物は、社外にある自社の在庫です
言われてみれば当たり前なのですが、この見方をしていない会社がほとんどです。棚を見て数える在庫と、外注先の棚に置いてある自社の品物は、会計の上では同じものです。棚卸で数が合わない原因の筆頭が、この社外在庫です。
しかも社外在庫には、社内の在庫に無い性質が2つあります。
- 自分では数えられません。電話して聞くか、戻ってくるまで分かりません
- 数が変わります。メッキで不良が出れば戻りは減り、熱処理で歪めば手直しに回ります。出した100個が100個で戻るとは限りません
ここが、社内工程の進捗管理をそのまま外注に当てはめられない理由です。社内なら「工程が進んだ」だけを追えば足りますが、外注は「進んだ」と「減った」を同時に追う必要があります。
出す人と、受ける人が違う
外注の記録が続かない理由の半分はこれです。
| 場面 | やる人 | 記録が飛ぶ理由 |
|---|---|---|
| 外注先へ出す | 出荷・現場の担当 | 便の時間に追われる。伝票は書くが台帳までは回らない |
| 納期を聞く | 生産管理・営業 | 電話で聞いた日付が、聞いた人の手帳にしか残らない |
| 戻りを受ける | 受入 | 戻った数が伝票と違っても、その場では気づきにくい |
| 請求を照合する | 事務 | 月末にまとめて届く。出した記録が無いと単価しか見られない |
4つの場面に4人が関わり、全員が「自分の担当のところだけ」を記録しています。出荷伝票の控え、手帳、受入の紙、請求書。4つが別の場所にあるので、つなぐ作業が発生します。つなぐ作業は、誰の担当でもありません。だから月末までやりません。
数が合わないときの書き方が、決まっていない
Excelの外注台帳が半年で止まる、いちばん技術的な理由がこれです。100個出して、98個戻り、2個が不良だったとき、どう書くのか。
- 元の行の数量を98に直す … 出した数が消えるので、請求の照合ができなくなります
- 不良2個の行を足す … 行が増え、同じ工番が何行にもなり、合計を出すのが手作業になります
- 備考欄に「不良2」と書く … 集計できません。読める人が読むだけの情報になります
どれも間違いではありませんが、会社の中で書き方が統一されないと、台帳は数か月で読めなくなります。人によって書き方が違うからです。そして統一しても、次は「手直しに回って翌月に戻ってきた分」で同じことが起きます。
正しい持ち方は、出しと戻しを別の記録にすることです
1つの外注に対して、出しが1行、戻しが0行以上。分納で3回に分けて戻れば戻しが3行になります。良品・不良・手直し中の数は、戻しの行が持ちます。出しの行は絶対に書き換えません。こうすると「出した数 −(戻った良品+不良)= まだ外にある数」が引き算で出ます。Excelでもこの形は作れますが、2枚のシートを工番で突き合わせる作業が毎回発生するので、そこが続きません。ツールにする値打ちがあるのは、この引き算を常に出しておくところです。
外注は、1社で終わりません
部品加工の会社で、外注が1工程だけということはあまりありません。切削 → 熱処理 → 研磨 → メッキ、のように外注先を渡り歩きます。しかも会社によっては、熱処理屋からメッキ屋へ直送します。
この連鎖には、面倒な性質があります。
- 1つ遅れると、後ろが全部ずれます。熱処理が2日遅れれば、メッキの引き取り日も納期も2日動きます
- 直送だと、自社を経由しません。現物を見ていないので、数も状態も相手からの連絡でしか分かりません
- どこで止まっているかが、すぐ言えません。客先に納期を聞かれたとき、2社に電話することになります
だから外注の記録は、工番ごとに「次にどこへ行くか」を持たせておく必要があります。持たせておけば、熱処理の戻り日が動いた時点で、後ろの予定がずれることがその場で見えます。社内の工番を追う話の続きとして、社外の工程まで1本の線にする、ということです。
月末の請求書の照合は、たいてい諦められています
外注先から届く請求書に、その月に出した品番と数量と単価が並んでいます。本来これは、こちらの出し入れの記録と一致しているはずです。ですが実際には、金額の合計だけ見て、支払いに回されます。
照合していない会社を責めるつもりはありません。照合するには、こちらに「その月に出した分の一覧」が必要で、それが無いからです。伝票の控えを1枚ずつめくって突き合わせるなら、半日仕事になります。
ただ、ここで起きている損は、実は小さくありません。よくあるのは次の3つです。
| よくある食い違い | なぜ気づかないか |
|---|---|
| 出した数で請求されている | 不良で戻らなかった分が、こちらの記録に無い |
| 単価が前の見積のまま | 数量が増えて単価が下がるはずの取り決めが、口頭だった |
| 手直しの分が二重に載る | 1回目と手直し後で、別の出しとして請求されている |
出しと戻しが1か所に貯まっていれば、月末に一覧を出して並べるだけで済みます。全部を突き合わせる必要はありません。数が合わない行だけ出れば足ります。
現場が押して、記録が1か所に貯まる形を見る(町工場の日次記録のデモ) 題材は日次の生産実績ですが、作りは外注台帳と同じです。現場が1画面で入力し、日付順に記録が貯まり、集計が自動で出るところまで動きます。外注台帳では、この「実績」の位置に「どこへ何個出したか」と「何個戻ったか」が入ります。外注台帳そのもののデモはまだ公開していないので、御社の外注先と工程を1つ教えていただければ、その形の試作画面を無料でお作りしてお送りします。いきなり全部やらない。3段階に分ける
第1段階:出しと戻しだけ
持つ欄は、出し側が 工番・品番・外注先・工程名・出した日・数量・約束の戻り日。戻し側が 戻った日・良品数・不良数・手直しに回った数。これだけです。単価も請求も、まだ入れません。
この段階でできるようになるのは1つ、「今、外に何がいくつ出ているか」の一覧です。約束の戻り日を過ぎているものが上に出る形にします。電話をかける先が、朝の1分で分かるようになります。
第2段階:現品票と受入
出しの登録で、番号を印字した現品票が出るようにします。戻ってきた箱の票の番号を入れれば、どの出しの戻りかが一意に決まります。「この箱、どの工番でしたっけ」が無くなります。戻りの検査結果をここに付けると、検査記録と同じ仕組みの上に載ります。
第3段階:請求の照合と連鎖
単価を登録して、月末に外注先ごとの一覧を出します。相手の請求書と数と単価を並べて、合わない行だけを出します。あわせて、工番ごとの次工程を持たせて、1社の遅れが後ろにどう響くかを出します。
第1段階だけでも、外注先への電話の回数は目に見えて減ります。先に第3段階から入らないでください。請求の照合をしたくて始める会社は多いのですが、照合の材料は第1段階の記録そのものなので、そこが無ければ照合する相手がありません。
逆に、期待しないほうがいいこと
- 外注先にシステムを使わせることはしません。相手にログインしてもらう形は、まず続きません。相手の事務所の手間が増えるだけで、相手には何の得も無いからです。記録するのは、こちらの出し入れだけです
- 納期は自動では分かりません。電話で聞いた日付を入れる場所を作るだけです。ツールの役目は「聞いた結果が、聞いた人以外にも見える」ところまでです
- 相手の基幹システムとはつなぎません。EDIや専用の受発注サービスは、相手が既に使っているなら、そちらが正です。こちらの台帳は自社の出し入れを持ちます
- 不良が減るわけではありません。減るのは「戻ってこないことに気づくのが遅れる」ぶんと、「請求が合っているか分からない」ぶんです
よくある質問
外注先が5社あって、やりとりはFAXと電話です
そのままで構いません。相手のやり方を変えてもらう話ではないからです。記録するのは、こちらが出した事実と戻った事実だけです。FAXの注文書をこちらから出しているなら、出しの登録から同じ内容を印刷する形にできるので、二度書きは減ります。
客先から支給された材料を、外注に出しています
欄を分けます。自社の材料と客先支給品は、数が合わなかったときの扱いがまったく違うからです(支給品の不良は、こちらが弁償するとは限りません)。台帳には所有者の欄を1つ足します。客先ごとの預り品の残数が出るようになるのが、この欄の値打ちです。支給品の残数を聞かれて即答できない会社は多いです。
熱処理屋からメッキ屋へ直送しています
直送は「戻りの登録が、次の出しを兼ねる」形にします。現物が自社に戻らないので、登録するのは相手からの連絡です。数が確認できるのは最後の工程から戻ったときになりますが、どこに何個あるはずかは分かるので、合わなかったときに遡る先が絞れます。
販売管理ソフトに外注の機能があります
あるなら、それを使ってください。足りないのはたいてい「今、外にあるものの一覧」と「出した数と戻った数の差」の2つです。その2つだけを外に作り、品番と工番はCSVでソフトから受け取る形にできます。考え方はパッケージの外に残る仕事と同じで、中心のデータはソフトに置いたままにします。
棚卸のときだけ分かればいいのですが
それなら第1段階だけで十分です。棚卸の日に「外にある分」の一覧を印刷できれば、社外在庫の数え漏れは無くなります。材料の発注の話と合わせると、社内と社外の両方が1つの数字になります。
現場にPCがありません
第1段階は事務所だけで回ります。出すときに伝票を書いているのは事務所か出荷の担当なので、そこで1回入力するだけです。第2段階で現品票の番号を読むところから現場が触りますが、タブレット1台を受入の台に置けば足ります。
何人まで使えますか
事務所の数人で使う第1段階はライトプランの範囲です。現場の受入からも入力し、記録を貯めて同時に開く第2段階からはスタンダードになります。人数で追加の費用はかかりません。
データは誰が持つのですか
御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。外注先の単価は取引条件そのものなので、扱いには特に気をつけます。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(出しと戻しの記録、外にあるものの一覧、遅れの抽出)はライトプランの範囲です。CSVの取り込みと書き出しもこの中に入ります。現品票の印字、受入からの入力、請求の照合、工番ごとの連鎖まで入れる場合はスタンダードになります。外注先に何かを導入していただく必要はないので、先方に費用は発生しません。外注先の追加や工程名の追加は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
今、外に何がいくつ出ているかを、1画面にします
外注先へ出している伝票を1枚(品番と数量が消えていて構いません)と、外注の工程名をいくつか。それだけで十分です。出しと戻しをどう持てば数が合うのか、画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。出している外注が1社だけで、月に数回しか無いのなら、伝票の控えをファイルに綴じるほうが早いと判断することもあります。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
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