「健診の案内は、全員に配りました」
健診機関から案内が届いて、事務の人が受診票を全員に配ります。配った記録は、机の上の名簿にチェックが並ぶ形で残ります。配ったことは、確かに全員ぶん残ります。そのあと結果票が、受けた人の分だけ順番に返ってきます。
先に結論を書きます。健診で見ないといけないのは「配ったか」ではなく「その人の期限までに受けたか」で、たいていの名簿は前者しか出していません。配った名簿は全員に印が付くので、見た印象は「済んでいる」になります。受けていない人は、名簿の上では印が付いたまま、何も起きていない行として残ります。しかも期限は人ごとに違います。順番に説明します。
受診の期限が見えなくなる4つの理由
1. 期限が、人ごとに違う
定期健診は「1年以内ごとに1回」です。会社の年度に1回ではありません。その人が前回受けた日から1年なので、入社の時期と前回の受診月がばらけていれば、期限も一人ずつ別の日に来ます。4月入社で5月に受けた人は翌年5月、11月入社で12月に受けた人は翌年12月です。
さらに、入ってきた人には雇入時の健診があります。これは定期健診とは別の1回で、入社のときに行います。入社が重なった月は、その人たちだけ定期とずれた周期で回り始めます。20人いれば、期限は20通りに散らばります。
健診の名簿は、たいてい「行が人、列が年度」でできています。この形は「今年度に受けたかどうか」を出すのには向いていますが、「この人の期限は、あと何日後か」はどこにも載りません。載せるには一人ずつ前回の受診日から1年後を数えて、今日からの日数を引くことになります。
2. 特殊健診は6か月ごとで、対象者が工程で決まる
ここが定期健診といちばん違うところです。有機溶剤、特定化学物質、鉛、粉じん、高気圧、放射線——こうした業務に従事している人には、定期健診とは別の健診が、原則6か月ごとにあります。年1回ではありません。周期が倍なので、年度の名簿とは最初から軸が合いません。
そして対象者は、人ではなく作業で決まります。洗浄や塗装の工程に入れば対象に入り、外れれば(規定の期間を置いて)対象から出ます。つまり配置替えをしたその日に、健診の対象者名簿が古くなります。ところが現場で配置を決めるのは製造の側で、名簿を持っているのは事務の側です。二人のあいだに、作業の割り付けが変わったことを伝える決まった経路がありません。
「去年の名簿に名前があった人」で回している会社では、新しく工程に入った人が、1回まるごと抜けます。抜けても誰も困らないので、気づくのは監督署の調査か、何年か後に健康の問題が出たときです。誰がどの作業をできる・している、という台帳ができる作業と資格の台帳の側にあるなら、対象者はそこから引けます。別々に持っているうちは、必ずずれます。
3. 未受診が、空欄に見えない
受けた人の結果票は、返ってきた順に増えます。受けていない人の行には、何も起きません。「配った」の印は付いたままなので、名簿を眺めても未受診の人は目に入りません。
これは有給の年5日と同じ構造です(有給の残日数と年5日の期限)。何も書かれていない行は、問題が無い行と見分けがつきません。増えていくものだけを見ていると、増えていないものに気づく仕組みが無いという形です。
しかも未受診になるのは、たいてい決まった人です。日程の日に客先が止まらない人、交替勤務で案内の回ってくる時間に居ない人、長期出張に出ている人。現場が忙しいほど、受けていない人が増えます。
4. 要再検査の人が、追えなくなる
結果票が返ってくると、ふつうはそこで一区切りになります。ところが結果には有所見——「要再検査」「要精密検査」「要医療」が混ざっています。再検査は健診そのものとは別の日に、別の医療機関で受けることになります。
ここに期限の列が無い会社が、とても多いです。結果票をファイルに綴じた時点で仕事が終わった形になっているので、「要再検査と言われた人が、その後受けたか」を引く場所がありません。次に分かるのは1年後の健診で、同じ所見がまた出たときです。
この4つに共通していること
どれも「安全衛生をやっていないから」ではありません。名簿の形が、配った記録を残すためにできているからです。期限は人ごとのカウントダウンで、しかも定期は1年・特殊は6か月・再検査はその都度と、周期が3種類あります。年度を横に並べた表とは軸が合いません。名簿が足りないのではなく、1本足りていません。
本当に重いのは、名簿を作り直す半日ではありません
作り直しは面倒ですが、いつやってもできる作業です。重いのは、受けさせていなかった期間を、あとから埋められないことのほうです。
定期健診も特殊健診も労働安全衛生法66条の義務で、受けさせていなければ罰金が定められています(同法120条・50万円以下)。ただ、現実にもっと効くのは別のところです。特殊健診は「いつから、どの物質を扱っていたか」の記録としても機能しています。健康の問題が何年か後に出てきたとき、会社の側に残っているのは健診の記録だけです。受けさせていなければ、その期間について何も言えません。記録が無いことは、本人にとっても会社にとっても、どちらにも悪いほうに働きます。
逆に言えば、期限の1か月前に分かっていれば、手はとても簡単です。健診機関に枠を取って、その人が抜けても止まらない日を選ぶだけです。安全衛生の話ではなく、生産の日取りの話になります。6か月ごとの特殊健診も、次の期限が画面に出ているなら、年2回の決まった仕事として回せます。
もう1つ、記録そのものが義務になっています
健康診断個人票を作って保存することが定められています(労働安全衛生規則51条)。保存期間は定期健診で5年、特殊健診は扱う物質によってもっと長いもの(30年や40年)があります。結果票を年度ごとの封筒に入れて綴じただけでは、人ごとに引ける形になっていません。いま名簿を作っているなら、方向はすでに合っています。足りないのは前回受診日と期限の欄です。
従業員50人以上の事業場では、これに加えて定期健康診断結果報告書を所轄の労働基準監督署に出すことになっています。報告書に書く数字(受診者数、有所見者数、項目ごとの人数)は、人ごとの記録が揃っていれば、数えるだけで出ます。
作るもの:3段階に分ける
第1段階:一人1行の受診台帳と、期限までのカウントダウン
入れるのは、その人について4つだけです。氏名(記号でも構いません)・入社日・前回の受診日・従事している作業の区分。あとは受診の記録を1行ずつ入れていきます(日付・誰が・どの健診か)。
出るのは一人1行で、こうなります。
| 氏名 | 作業区分 | 健診の種類(周期) | 前回 | 次回期限 | 期限まで | 状態 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 洗浄 | 定期+有機溶剤(6か月) | 4月12日 | 10月12日 | 10日後 | 未受診 |
| B | 機械加工 | 定期(1年) | 9月3日 | 翌年9月3日 | 336日後 | 済 |
| C | 機械加工 | 定期(1年) | — | 入社30日後 | 18日後 | 雇入時・未 |
| D | 塗装 | 定期+有機溶剤(6か月) | 6月7日 | 12月7日 | 66日後 | 要再検査 |
大事なのは順番です。期限が近くて、まだ受けていない人が上に来ます。この表の1行目がAさんなのは、名簿の並び順でもあいうえお順でもなく、6か月の期限が10日後に来るのに未受診だからです。年度の名簿で並べると、Aさんは「去年受けている人」として他と同じ行に沈みます。
期限が60日前になると黄色、30日前になると赤にします。受診の記録を1行足すと、その場で次回の期限が入れ替わります。印刷すると健康診断個人票として出せる形(氏名・受診日・健診の種類・医師の氏名・所見の有無が入った形)にします。CSVでも出せるようにしておけば、健診機関へ渡す受診者リストや、社労士さんへの受け渡しに使えます。
ここまでが第1段階で、ライトプラン(48時間)の範囲です。
第2段階:特殊健診の対象者を作業から引く、再検査を追う
手作業でいちばん抜けるのは、配置替えで特殊健診の対象者が変わるところです。作業の区分を人ごとに持っておけば、対象になる健診の種類と周期はそこから機械的に決まります。洗浄の工程に入れた日に、その人の行に「有機溶剤・6か月」が増えます。外れたときも同じで、いつから対象外になったかが記録として残ります。
これは「配置替えのときに名簿を直す」を人の記憶に頼らない形にするだけのことですが、ここが人の記憶に頼っている限り、何年か経つと必ず抜けます。現場の割り付けを別に持っている会社では、割り付けを変えたらこちらにも反映される形にします。
もう1つは、要再検査の追跡です。結果に「要再検査」が入った人には、いつまでに・どこで受けるかの列を作ります。受けた記録が入るまで、その人は未完了の側に残ります。1年後の健診まで持ち越されません。
特殊健診の記録は保存年限が長いので、この段階で物質ごとに年限を持たせるようにします。5年で消してよいものと、30年置くものが同じ箱に入っていると、短い側に合わせて捨ててしまいます。
第3段階:産業医の意見と、50人以上の報告書
有所見があった人については、医師の意見を聴いて記録に残すことになっています。聴いた日、意見の内容、それを受けて就業上の措置を取ったかどうかを、人ごとの行に付けます。紙でやっていると、どの人について聴いたかが結果票の束に埋もれます。
従業員50人以上の事業場では、定期健康診断結果報告書の数字を画面から出せるようにします。受診者数、有所見者の人数、項目ごとの人数は、第1段階の記録が揃っていれば数えるだけです。ストレスチェックの実施時期も同じ画面で期限として持てます。
この段階になると人ごとの履歴が何年ぶんも積み上がるので、データの蓄積とログインが要ります。スタンダードの範囲です。
逆に、期待しないほうがいいこと
- 結果の医学的な判断はしません。数値をどう読むか、就業に制限が要るかは産業医・医師の領分です。こちらは受けたかどうかと期限を数える側です
- 健診機関の予約は置き換えません。日程の調整は従来どおりです。こちらは「誰をいつまでに出すか」の一覧を出すところまでです
- どの特殊健診が必要かの判断はしません。扱っている物質と作業がどの規則に当たるかは、作業内容の判断です。産業医・社会保険労務士さん、または労働基準監督署に確認してください。決まった形を教えていただければ、そのとおりに周期を数える画面にします
- 検査の数値を全部入れる前提にしません。健診結果は個人情報保護法の要配慮個人情報です。画面に持つのを「受けたか・いつ・健診の種類・所見の有無・次の期限」だけにしても、期限の管理はそのまま成り立ちます。数値を入れたい場合は、見られる人を分ける作りにします(第3段階)
- 法令の解釈は書きません。この記事に書いた周期や年限は制度の一般的な形で、御社にどう当たるかは作業内容と事業場の人数で変わります。判断が要る部分は、そう書いてお返しします
よくある質問
健診機関が受診者リストを出してくれます
そのリストはその健診機関で受けた人の一覧です。手元に欲しいのは、受けていない人と、別の機関で受けた人を含めた全員の期限です。確かめていただきたいのは2つです。リストに未受診の人が載っているかと、6か月ごとの特殊健診の次回期限が人ごとに出るか。この2つが出るなら、新しく作る必要はありません。
20人ほどの工場です。多すぎて分からない規模ではありません
効いてくるのは人数ではなく、周期が何種類あるかです。全員が定期健診だけで、毎年同じ月にまとめて受けている会社なら、期限は1通りなのでカレンダーで足ります。特殊健診の対象者が混ざった時点で、6か月の周期が人ごとに別々に回り始めます。難しいのは人数ではなく、周期と対象者の組み合わせの数です。
パート・アルバイトも対象になりますか
期間の定めのない(または1年以上使用される見込みの)人で、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば、定期健診の対象になります。4分の3に届かない人も、2分の1以上なら実施が望ましいとされています。特殊健診はその業務に従事しているかどうかで決まるので、勤務時間の長さとは別の線引きです。短時間のパートでも、有機溶剤を扱う工程に入っていれば対象です。ここは取り違えやすいところです。
本人が受けたがりません
健診を受けることは、労働者の側の義務でもあります(労働安全衛生法66条5項)。ただ実際に効くのは、義務だと伝えることよりもその人が抜けても止まらない日を選ぶほうです。受けたがらない理由は、たいてい「その日に自分が抜けると仕事が止まる」です。期限が1か月前に分かっていれば、日を選ぶ余地があります。
特殊健診の対象かどうか分かりません
そこは正直に、こちらでは判断しません。作業で扱っている物質と、その作業にどれだけ従事しているかで決まるので、産業医・社会保険労務士さん、または所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。「この作業区分はこの健診が6か月ごと」という表を1枚いただければ、そのとおりに数える画面にします。あとで表を差し替えることもできます。
検査の数値は画面に入れたくありません
入れない形で作れます。健診結果は要配慮個人情報にあたるので、入れないほうが扱いは軽くなります。期限の管理に必要なのは「いつ受けたか」と「所見があったか」までで、数値そのものは要りません。結果票は従来どおり鍵のかかる場所に紙で保管して、画面は期限と受診の有無だけを持つ、という分け方が多いです。
50人を超えました
産業医の選任、定期健康診断結果報告書の提出、ストレスチェックの実施が加わります。報告書に書く数字は人ごとの記録から数えられるので、第1段階の記録が揃っていれば、報告書のための集計作業は増えません。意見聴取の記録まで入れると第3段階(スタンダード)になります。
データは誰が持つのですか
御社専用のURLで、御社のデータだけが入ります。他の案件に混ぜることはありません。ライトプランは画面の中で完結する作りなので、ブラウザの中に保存してCSVで持ち出す形にもできます。健診の記録は社内のパソコン以外に置きたくない、という会社が多いので、その形にもできます。言っていただければそうします。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(受診の記録の入力、一人1行の受診台帳、定期と特殊の次回期限とカウントダウン、未受診が上に来る並び、健康診断個人票の印刷とCSV)はライトプランの範囲です。作業区分から特殊健診の対象者を引く、要再検査の追跡、物質ごとの保存年限、産業医の意見聴取の記録、報告書の集計まで入れるとスタンダードになります。いまお使いの健診機関と、紙の結果票の保管は、そのままで構いません。作業区分と健診の対応表を差し替える、周期を変える、知らせる日数を変えるといった調整は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
「次に期限が来るのは誰で、あと何日か」を1画面にします
従業員の人数と、特殊健診の対象になる作業があるかどうか。それだけで十分です(氏名は伏せていて構いません)。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。全員が定期健診だけで、毎年同じ月にまとめて受けていて、未受診が出たことがないなら、この仕組みは要りません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
メールで相談する 入力フォームで相談する今いちばん手間になっている作業をひとつ教えていただければ、その作業に合わせた試作画面を 1 枚、無料でお作りします。
その作業をここに書いて送る(無料の試作画面を頼む) →入力フォーム。会社名・お名前・メール・作業の4項目だけです。メールソフトは要りません。
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