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「その段取り、あの人しかできません」

2026年9月24日 / 48時間ツール工房 / 作業者のできる作業と資格の期限を1つの台帳にする

朝いちばんに客先から追加が入ります。「これ、今日中に流せますか」。機械は空いています。材料もあります。それでも即答できないのは、その品物の段取りができる人が今日いるかどうかが、すぐには分からないからです。班長に聞くと「Aさんならできますが、今日は休みです」。もう一つ、まったく別の日に同じ台帳の不在が出ます。客先監査で「玉掛けの有資格者の名簿を見せてください」と言われ、総務のキャビネットから修了証のコピーを探し始めます。名簿のExcelはあるのですが、最後に更新したのが2年前で、そこに載っている人がまだ在籍しているかも怪しい。

先に結論を書きます。「できる人が足りない」のは、人が足りないからではありません。多くの工場で、できる人はちゃんといます。足りていないのは「どの作業を、誰ができるのか」の一覧です。技能は現場の班長の頭の中にあり、資格は総務のExcelにあり、教育の記録は安全衛生のバインダーにある。3つに分かれているので、段取りを割り振る人は技能側しか見ず、監査に出すのは資格側だけになります。突き合わせが必要になるのは、人が抜けた日と、監査の日だけです。その2日に限って、毎回半日が消えます。

台帳が3つに分かれている、3つの理由

1. 技能は「頭の中」、資格は「Excel」、教育は「紙」にある

誰が何をできるかは、ふつう明文化されていません。班長が毎日の割り振りで使っている知識で、それを書き出す機会が1年に一度も来ないからです。一方で資格は、取ったときに修了証が出るので記録が残ります。ただしその記録は総務が持ち、現場の割り振りには使われません。結果として、同じ「Aさんは何ができるか」という問いに対して、答えを出せる人が社内で2人に分かれ、どちらも片方しか知りません。班長が辞めるとき、実質的に消えるのは技能側の台帳です。

2. 期限があるものと、無いものが混ざっている

ここが最もこぼれます。技能講習や特別教育の多くは修了すればそれで終わりで、更新の期限がありません。ところが同じキャビネットの中に、期限があるものが混ざっています。たとえば溶接技能者の認証(定期の継続手続きと更新がある)、非破壊検査の資格、特殊健康診断、運転免許、危険物取扱者の免状の書換え——制度ごとに年数も手続きも違い、しかも改まります。覚えておくべきものと、覚えなくていいものが同じ引き出しに入っていると、人は全部を覚えないほうに倒れます。気づくのは、切れたあとです。

ですので、こちらで「この資格は何年です」と決めることはしません。制度の要件は御社で確認していただき、台帳には「次回の期限」という御社が決めた日付を1つ置きます。仕組みの仕事は、その日付を忘れないようにすることだけです。

3. 「1人しかできない作業」の一覧を、誰も持っていない

1人しかできない作業がいくつあるか、即答できる工場はほとんどありません。分かるのはその人が抜けた日です。休み、退職、異動、けが。抜けてから「あれ、これできるの他にいたっけ」と探し始めます。ここで痛いのは、手を打つ時間がもう無いことです。育成には数か月かかるのに、気づくのは当日の朝になります。逆に言えば、この一覧が1枚あるだけで、育成の順番が自動的に決まります。「危ないのはこの3作業」が分かれば、次に誰に教えるかは考えるまでもありません。

この3つに共通していること

どれも「記録していない」という話ではありません。修了証は綴じてあり、資格者名簿もあり、班長は誰が何をできるか知っています。足りないのは記録そのものではなく、「作業」と「人」を掛けた一覧です。紙とExcelの台帳は人の側からしか並べられないので(1人1行で、その人の資格が並ぶ形)、作業の側から「これができる人は誰か」を引くことができません。探す時間の正体は、その掛け算を毎回、頭の中でやり直していることです。

やりたいのは、人事評価の仕組みではありません

ここを取り違えると必ず止まります。スキル等級の制度も、評価点も、賃金との連動も、資格取得の目標管理も要りません。欲しいのは次の2つの一覧だけです。「作業:5軸の段取り / できる人:A・B(Bは習熟中) / 単独でできるのは1名」と、「玉掛け:有資格者5名 / 次の期限はDの10月31日」。前者は朝の割り振りに使い、後者は監査と更新の手配に使います。

この2つが出るために必要なのは、作業の一覧と、人の一覧と、その交点に○△×を置くことだけです。工程ごとの実績収集も、ICカードの打刻も、人事システムとの連携も要りません。入れる内容は、いま班長が頭の中に持っているものと、総務のExcelに入っているものを同じ画面に並べるだけです。変えるのは、置き場所を1つにすることだけです。

作るもの:3段階に分ける

第1段階:作業の一覧をつくり、人ごとに○△×を置く

まず作業を書き出します。ここが唯一、頭を使うところです。細かくしすぎると埋まらないので、「1人で任せられるかどうかを判断する単位」で切ります。町工場なら20〜40行に収まります(例:NC旋盤の段取り/マシニングの段取り/5軸の段取り/プログラム作成/三次元測定機での測定/クレーン操作/フォークリフト/溶接(半自動)/熱処理の受け渡し)。そこへ人を横に並べ、交点に○(1人で任せられる)△(ついていれば任せられる)×(未経験)を置きます。埋めるのは班長で、20〜40行 × 15人なら30分で埋まります。「作業の側から見る」「人の側から見る」の2通りで読めるようになり、○が1人だけの行が自動で色つきで出ます。これが「1人しかできない作業」の一覧です。

第2段階:資格・教育の記録に「次回期限」の1列を足す

次に、資格と教育を同じ画面の人の側に入れます。入れるのは「資格・教育の名称/取得(修了)日/次回の期限(無ければ空欄)/修了証の写真かPDF」の4つだけです。修了証はスマホで撮ったものでかまいません。ここで初めて、監査で求められる資格者名簿が画面から印刷できるようになり、キャビネットを開ける必要がなくなります。そして期限が空欄でないものだけが、期限の近い順に1つの一覧に並びます。30日前・60日前で色が変わるので、探しに行かなくても目に入ります。切れたものは赤で残り、消えません。

第3段階:割り振りのときに、できる人だけを出す

最後に、使う側の画面を作ります。作業を選ぶと、○の人と△の人が出ます。資格の期限が切れている人は名前の横に警告が出るので、「その作業、期限が切れた人にさせていた」が起きません。翌日・翌週の予定と組み合わせれば、「明日この作業を流すなら、できる人は1人だけ」がその場で分かります。ここまで来ると、朝の追加注文にその場で「今日は無理ですが明後日なら」と答えられます。逆に、休みの申請が上がってきた時点で「その日は5軸が止まります」が先に見えます。

入れるものと、出てくるもの

入れるもの:作業の一覧(20〜40行・最初に1回)/人ごとの○△×(班長が30分)/資格・教育の名称と取得日・次回期限・修了証の写真/習熟したときの○△×の書き換え(あったときだけ)。
出てくるもの:作業から引く「できる人」の一覧/○が1人だけの作業の一覧(育成の順番)/期限の近い順の一覧(30日前・60日前で色が変わる)/監査に出せる資格者名簿の印刷とPDF/人ごとの技能・資格の1枚(面談に使える)/全部のCSV。

逆に、期待しないほうがいいこと

よくある質問

客先監査やISOで資格者名簿を出します。これで足りますか

審査や監査で見られるのは「自社で決めた手順どおりに、必要な資格を持つ人がその作業をしていること」が記録から追えるかで、台帳が紙かどうかではありません。ですので名簿はいまお使いの様式に近い形で印刷できるようにします。移行の初期は紙と画面を1〜2か月並行させて、印刷したものが実際に監査に出せる形かをご自身で確かめてから紙をやめるのが安全です。この判断は御社の認証範囲と客先の要求によるので、こちらで「これで通ります」とは申し上げません。

15人くらいの工場です。Excelで足りませんか

人数だけなら足ります。Excelが苦しくなるのは、「作業 × 人」の表と「人 × 資格」の表を、同じファイルの別シートで持ち始めたときです。人が1人増えるたびに2枚を直すことになり、片方だけ直した状態が残ります。もう一つの分かれ目は期限です。Excelは日付を色づけできますが、開かないと色は見えません。そして期限の台帳は、ふだん開かない台帳です。人数ではなく「シートが2枚以上ある」「期限を目で探している」のどちらかに当てはまるかで見てください。

評価や賃金に使われるのでは、と現場が嫌がりそうです

実際に起きます。ここは仕組みの作り方で減らせます。まず点数をつけません(○△×の3段階だけで、合計点も平均も出しません)。次に人の並び順を「できる数」で並べ替える機能を付けません。そして誰が見られるかを決めます(本人と班長と総務まで、など)。それでも、導入の目的を「1人しかできない作業を減らすため」と最初に言えるかどうかが効きます。この一覧でいちばん困るのは、実は1人に集中させている会社側です。

派遣やパート、外注の職人も入りますか

入ります。むしろ入れないと意味が半分になります(できる人を数えるのが目的なので)。区分の欄を設けて「社員/パート/派遣/外注」を分け、資格の期限を自社で管理する人だけに期限の欄を使うのがふつうです。外注の職人については「この作業を任せられる」だけを持ち、資格の証憑は先方の管理に任せる形にします。区分で絞り込めるので、「社員だけでこの作業が回るか」も見られます。

期限が近い人を、自動で知らせてほしい

できます。ただし第2段階では画面の色だけにしておくことをおすすめします。通知は、送る先と頻度を決めないとすぐに読まれなくなるためです(毎朝全員に届くメールは1週間で無視されます)。実際に使ってみて、期限の一覧を見る人と頻度が決まってから、月初に総務へ1通だけのような形で足すのが長持ちします。通知を足すのは保守の範囲(月2件までの改修)でできます。

まず何から始めればいいですか

紙に作業を10行書き出して、それぞれ「1人で任せられる人が何人いるか」を数えてみてください。10行のうち1人の行が1つも無ければ、いまは仕組みを作るタイミングではありません。2つ以上あったなら、それが直すところです。そしてもう一つ、いちばん最近切れた資格を思い出してみてください。切れていたことに気づいたのが更新の前か後かで、いまの台帳が機能しているかが分かります。

データは誰が持つのですか

御社のものです。作業・人・○△×・資格と期限はCSVで、修了証の画像はファイルのままいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。この台帳は氏名と資格という個人情報そのものを含むので、制作に必要な最小限だけをお預かりし、見られる人を絞る設計を前提にします。テスト用に人名を伏せた形(A・B・C)でお渡しいただいてもかまいません。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

作業 × 人の表を1枚にして○△×を置き、作業から「できる人」を引き、○が1人だけの行を色で出すところまではライトプランの範囲です。資格と期限の台帳を同じ画面に入れて修了証の画像を貯める、監査用の名簿を印刷とPDFで出す、期限の通知を出す、班長と総務と本人で見える範囲を分ける、割り振りの画面から使う——このあたりはスタンダードになります。作業の行を足す、区分を増やす、名簿の様式を変える、といった変更は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。

「その作業ができるのは今日1人だけです」が、朝いちばんに分かる状態にします

いまお使いの資格者名簿を1枚と、作業の名前を10個ほど(氏名は伏せていて構いません)。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。作業を書き出してみて1人しかできない行が無ければ、作らないほうがよいとお伝えします。相談は無料です。

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