「あの人、有給あと何日でしたっけ」
事務の人がExcelの有給管理表を開いて、その人の行を横に追い、指で数えます。「繰越が8日で、今年が14日で、1日使っているので、あと21日です」。数字は正しく出ます。正しく出るので、この表は役目を果たしているように見えます。
先に結論を書きます。有給で見ないといけない数字は2つあって、たいていの表は片方しか出していません。出ているのは残日数で、出ていないのは年5日を取らせる期限が、その人にいつ来るかです。そして厄介なのは、この2つが逆の向きを指すことです。残日数が21日ある人は、表の上では余裕があるように見えます。ですが21日も余っているのは、その人が使っていないからで、年5日に届いていない候補はまさにその人です。順番に説明します。
年5日の期限が見えなくなる3つの理由
1. 期限が、人ごとに違う
年5日を取らせる1年は、会社の年度ではありません。その人の付与日から1年です。入社日を基準にしている会社では、付与日が一人ずつ違います。4月入社の人は10月17日、8月入社の人は翌年2月1日、という具合に、15人いれば期限が15通りあります。
Excelの有給管理表は、たいてい「行が人、列が月」でできています。この形は残日数を出すのには向いていますが、「この人の期限は、あと23日後」という情報はどこにも載りません。載せるには一人ずつ付与日から1年後を数えて、今日からの日数を引くことになります。15人ぶん毎月やる作業なので、誰もやりません。
2. 残日数と、取った日数は別の数字
残日数は「あと何日使えるか」で、年5日は「この1年で何日使ったか」です。方向が逆なので、片方から片方は出ません。ところが表の上では、どちらも同じ「有給の欄」に見えます。
さらに繰越が混ざると、印象が完全に裏返ります。繰越が多い人は残日数の合計が20日を超えるので、表を眺めた印象は「この人は余っている=手当ての要らない人」になります。実際には、繰越が多いこと自体が「去年も使えていない」という記録です。去年使えなかった人が今年使えるようになる理由は、普通はありません。
3. 未達になるのは、申し出ない人
休暇届が出てこない人は、2通りあります。休む必要が無い人と、休みたくても言い出せない人です。部品加工の現場では、後者はだいたい決まっています。その機械を回せる人、その段取りを組める人、客先の名前を覚えている人です。休むと仕事が止まるので、本人が先に遠慮します。
届が出てこない側を管理表から見ると、何も書かれていない行になります。何も書かれていない行は、問題が無い行と見分けがつきません。誰に寄っているかはできる作業と資格の台帳と並べると理由まで見えますが、まずは寄っていること自体が表に出ていません。
この3つに共通していること
どれも「労務管理をしていないから」ではありません。表の形が、残日数を出すためにできているからです。年5日は人ごとのカウントダウンなので、月を横に並べた表とは軸が合いません。軸が合わない数字は、同じ表に足しても出てこないだけです。表が足りないのではなく、1本足りていません。
本当に重いのは、数え直しの半日ではありません
数え直しは確かに面倒ですが、いつやってもできる作業です。重いのは、期限を過ぎたあとに打てる手が1つも無いことのほうです。
残業は、超えてしまったら翌月を削るという手が残ります。有給の年5日は違います。期限までに取らせていなければ、そこで確定します。翌月に3日まとめて休ませても、過ぎた1年ぶんは戻りません。しかも年5日は労働基準法39条7項の義務で、違反は30万円以下の罰金が定められており、未達の人数ぶんで数えられます。10人まとめて見落とすと、1件の抜けではなくなります。
逆に言えば、期限の1か月前に分かっていれば、手はとても簡単です。有給は、会社の側から日を指定して取らせることが認められています(39条7項はむしろそれを求めています)。あと2日足りない人がいるなら、その人が抜けても回る日を2日選んで指定するだけです。生産の側で調整する話であって、法律の話ではなくなります。
もう1つ、表そのものが義務になっています
2019年4月から、年次有給休暇管理簿の作成と保存(3年間)が定められています。載せる項目は時季(いつ取ったか)・日数・基準日(付与日)です。つまり「誰が、いつ、何日取ったか」を人ごとに残しておくこと自体が、やっておかないといけない仕事になっています。紙の休暇届を綴じただけでは、人ごとに引ける形になっていません。いま管理表を作っているなら、方向はすでに合っています。足りないのは基準日と期限の欄です。
作るもの:3段階に分ける
第1段階:一人1行の管理簿と、期限までのカウントダウン
入れるのは、その人について3つだけです。氏名(記号でも構いません)・入社日・週の所定労働日数。あとは休暇届を1行ずつ入れていきます(日付・誰が・全日か半日か)。
出るのは一人1行で、こうなります。
| 氏名 | 基準日 | 今年の付与 | 繰越 | 取得 | 残 | 年5日 | 期限まで |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A | 4月17日 | 14日 | 8日 | 1日 | 21日 | あと4日 | 23日後 |
| B | 6月1日 | 11日 | 3日 | 6日 | 8日 | 達成 | 243日後 |
| C | 10月1日 | 10日 | 0日 | 0日 | 10日 | あと5日 | 365日後 |
大事なのは順番です。期限が近くて、まだ足りていない人が上に来ます。この表の1行目がAさんなのは、残日数が21日でいちばん多いからではなく、あと4日足りないのに期限が23日後だからです。残日数で並べると、Aさんは「余裕のある人」として下に沈みます。
期限が60日前になると黄色、30日前になると赤にします。休暇届を1行足すと、その場で全部の数字が入れ替わります。印刷するとそのまま管理簿として出せる形(時季・日数・基準日が入った形)にします。CSVでも出せるようにしておけば、給与ソフトへの入力や社労士さんへの受け渡しに使えます。
ここまでが第1段階で、ライトプラン(48時間)の範囲です。
第2段階:比例付与と、半日・時間単位の数え分け
手作業でいちばん抜けるのは、パート・アルバイトが途中から年5日の対象に入るところです。週の所定労働日数が4日以下の人は付与日数が比例して少なくなるので、入った年は7日や5日から始まります。年5日の義務がかかるのは「10日以上付与された人」なので、最初は対象外です。ところが勤続が進むと比例付与でも10日に届く年が来て、その年から対象に入ります。
この境目は、表を見ていても分かりません。去年まで対象外だったので、対象外の人として扱う習慣ができているからです。週の所定労働日数を入れておけば、付与日数はそこから機械的に決まるので、10日に届いた年に自動で対象側に移ります。「今年からこの人も対象です」と画面に出る、というだけのことですが、ここが人の記憶に頼っている限り、何年か経つと必ず抜けます。
もう1つは、休んだ日の数え方です。半日で取った日は0.5日として年5日に数えられますが、時間単位で取った分は年5日には数えられません。どちらも「有給を使った」ことには変わらないので、残日数のほうは減ります。残日数は減るのに、年5日は進まないという形になるので、入力のときに種別を分けておかないと、あとから区別がつきません。時間単位を使っている会社では、ここが見落としのいちばん多いところです。
繰越も同じ段階で扱います。有給は2年で時効になるので、繰越は1年ぶんまでです。どの分がいつ消えるかを出しておくと、「消える前に使う」という当たり前の順番で取れます。
第3段階:こちらから日を指定する、計画的に割り当てる
未達の人が分かったら、次は「いつ取らせるか」です。ここは生産の話なので、機械の空きや客先の納期と突き合わせて候補日を出します。その人が抜けても止まらない日を出すだけなので、機械ごとの積み残しが見えていれば、そこから引けます。
指定した日は記録して、本人に渡す書面を印刷できるようにします。会社の側から日を指定する場合は、伝えた記録が残っている形にしておくほうが確実です。
計画的付与(労使協定で、5日を超える部分をあらかじめ割り当てるやり方)をしている会社は、協定で決めた日を先に入れておきます。そうすると残りの必要日数だけが出るので、画面の上では「あと何日」が最初から少なくなります。部署やラインごとの取得率も、この段階なら出せます。
逆に、期待しないほうがいいこと
- 給与計算はしません。有給の日の賃金をどう計算するかは就業規則で決まっているので、給与ソフトの仕事です。こちらは日数だけを数えます
- 出退勤の打刻は置き換えません。タイムカードも打刻機もそのままで構いません。有給の日数は打刻からは出ないので、別の1本として持ちます
- 就業規則と労使協定の判断はしません。基準日を全員で揃えるやり方、計画的付与の協定の作り方、変形労働時間制との組み合わせは社会保険労務士さんの領分です。こちらは、決まった規則のとおりに数える側です。規則が決まっていれば、そのとおりに計算する画面を作れます
- 法令の解釈は書きません。この記事に書いた日数や期限は制度の一般的な形で、御社にどう当たるかは規則と実際の運用で変わります。判断が要る部分は、そう書いてお返しします
よくある質問
給与ソフトに有給の欄が付いています
残日数が出ているなら、第1段階の半分はすでにできています。確かめていただきたいのは2つです。基準日ごとの期限までの日数が出るかと、未達の人が上に並ぶ画面があるか。この2つが出るソフトなら、新しく作る必要はありません。出ない場合、残日数だけを見て「余っている人=大丈夫」と読んでしまう形は残ります。
15人ほどの工場です。多すぎて分からない規模ではありません
効いてくるのは人数ではなく、基準日が何通りあるかです。全員4月1日に揃っている会社なら、期限は1通りなので手帳で足ります。入社日基準なら、15人で15通りの期限が別々に来ます。覚えておくのが難しいのは人数ではなく、期限の種類の数です。
パート・アルバイトも対象になりますか
付与そのものは、週1日勤務の人にも日数が決まっています(週の所定労働日数に応じた比例付与)。年5日を取らせる義務は、その年に10日以上付与された人にかかります。週4日勤務の人でも勤続が進めば10日に届く年が来るので、途中から対象に入ります。この切り替わりが、手作業でいちばん抜けるところです。
半日や時間単位で取っています
半日は0.5日として年5日に数えられますが、時間単位で取った分は年5日には数えられません。残日数のほうは両方とも減ります。同じ画面で扱うなら、入力のときに「全日・半日・時間」を分けておく必要があります。あとから伝票を見返して仕分けるのは、たいていできません。
基準日を全員4月1日に揃えたいのですが
付与を前倒しして揃えるやり方は認められています。ただし揃えた年は期間が重なるので、5日の数え方に調整が入ります。この設計は社会保険労務士さんに決めていただくのが確実です。決まった形を教えていただければ、そのとおりに計算する画面にします。切り替えの年だけ数え方が違うという指定でも構いません。
すでに期限を過ぎてしまった人がいます
過ぎた分は戻せません。そこは正直に書きます。できるのは、いま期限が近い人を止めることだけです。基準日を並べれば、次に危ないのが誰でいつなのかは今日のうちに出ます。過去の分の扱いは労務の判断になるので、社会保険労務士さんに相談してください。
現場に「休みを取れ」と言いにくいのですが
そこが実際にはいちばん難しいところだと思います。ただ、言いにくさの中身は「その人が抜けたら回らない」という不安で、休暇の話ではありません。だから、その人が抜けても止まらない日を先に見つけるほうが早いです。第3段階を機械の空きと並べているのはそのためです。数字が出ると、話が「休んでほしい」から「この日なら止まりません」に変わります。
何人まで使えますか
第1段階のライトプランは、50人ほどまでは同じ作りで動きます。それを超える場合と、本人が自分の残日数を見られるようにする場合は、ログインとデータの蓄積が要るのでスタンダードになります。
データは誰が持つのですか
御社専用のURLで、御社のデータだけが入ります。他の案件に混ぜることはありません。ライトプランは画面の中で完結する作りなので、ブラウザの中に保存してCSVで持ち出す形にもできます。社内のパソコン以外に置きたくない場合は、そう言っていただければその形にします。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(休暇届の入力、一人1行の管理簿、年5日の達成状況と期限までのカウントダウン、印刷とCSV)はライトプランの範囲です。比例付与と半日・時間単位の数え分け、繰越の時効、こちらから指定した日の記録、本人ごとのログインまで入れるとスタンダードになります。いまお使いのタイムカードと給与ソフトは、そのままで構いません。基準日の決まりを変える、付与日数の表を差し替える、時間単位年休の扱いを変えるといった調整は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
「次に期限が来るのは誰で、あと何日か」を1画面にします
従業員の人数と、基準日を入社日ごとにしているか全員で揃えているか。それだけで十分です(氏名は伏せていて構いません)。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。全員の基準日が揃っていて、毎年5日以上は普通に消化できているなら、この仕組みは要りません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
メールで相談する 入力フォームで相談する今いちばん手間になっている作業をひとつ教えていただければ、その作業に合わせた試作画面を 1 枚、無料でお作りします。
その作業をここに書いて送る(無料の試作画面を頼む) →入力フォーム。会社名・お名前・メール・作業の4項目だけです。メールソフトは要りません。
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