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「気づいたときには、もう超えていました」

2026年9月29日 / 48時間ツール工房 / 残業時間を、月が締まる前に出す

月初の数日、事務の人がタイムカードを1枚ずつめくって、出退勤の時刻をExcelに打ち直します。関数で差を取って、休憩を引いて、残業時間を出します。半日かけて表ができあがり、社長がそれを見て言います。「Aさん、先月92時間か」。そこで初めて分かるのですが、その月はもう終わっています。

先に結論を書きます。残業の数字は、集計ではなく途中経過として要るものです。月が締まってから正しい数字が出ても、打てる手は残っていません。段取りを替えるにも、応援を頼むにも、その月の途中でなければ間に合わないからです。要るのは、今日時点の累計と、このままいくと月末にいくらになるかの見込み、それだけです。順番に説明します。

月末まで分からなくなる3つの理由

1. 打ち直しが、月に1回しか起きない

紙のタイムカードでも、打刻機でも、出退勤そのものは毎日記録されています。止まっているのは記録ではなく、集計のほうです。打ち直しに半日かかるので、月に1回しかやりません。週に1回やれば途中経過は出ますが、半日の作業を月4回に増やす話になるので、誰も言い出しません。結果として、月の途中の残業時間は「誰も知らない」状態のまま25日ほど過ぎます。

2. 上限は「その月」だけでは決まらない

残業の上限は月単位だけで効くものではありません。2〜6か月の平均で見る決まりと、年間の合計で見る決まりが同時にかかります。ここが厄介で、毎月なんとか収めていても、平均と年計のほうで先に詰むことがあります。4月から積み上がった年計は、Excelの月別シートを12枚開いて足さないと出ません。開くのが面倒なので、たいてい誰も足しません。気づくのは、2月や3月になって「今年もう使い切っている」と分かったときです。

3. 残業は、人に寄る

部品加工の現場では、残業は全員に等しく乗りません。その機械を回せる人、その段取りを組める人に寄ります。工場全体の平均残業が月20時間でも、その中に92時間の人が1人いる、という形になります。平均で見ている限り、この1人は最後まで見えません。そして上限は工場の平均にではなく、1人ずつにかかります。誰に寄っているかは、できる作業と資格の台帳と並べると理由まで見えますが、まずは寄っていること自体が見えていません。

この3つに共通していること

どれも「労務管理がずさんだから」ではありません。集計が重いので、月に1回しかできない。それだけです。月に1回しかできない作業から、月の途中の数字は出ません。出ないものを見ながら判断することはできないので、判断は月が終わってからになります。順番が逆になっているだけで、やっていること自体は間違っていません。

本当に重いのは、打ち直しの半日ではありません

半日は確かに重いのですが、それは毎月決まって発生する、予定できる作業です。本当に重いのは、超えたあとに起きることのほうです。すでに働いてしまった時間は、後から減らせません。減らせないので、打てる手は「翌月を削る」しか残りません。翌月を削ると、その人が抱えていた仕事が他の人か、翌々月に移るだけになります。

この状態で起きていることは、だいたい次の3つです。

途中経過が出るようになると、変わるのは1つだけです。「今月あと何時間まで」が、月の半ばに分かります。分かれば、その仕事を別の人に回すか、外注に出すか、納期を相談するかを、まだ間に合ううちに選べます。外注に出す判断も、月末に振り返って決めるものではありません。

作るもの:3段階に分ける

第1段階:今日時点の累計と、月末の着地見込み

入力は出勤時刻・退勤時刻・休憩時間の3つだけです。紙のタイムカードは残したままで構いません(後述します)。画面が出すのは、1人ずつの当月の残業累計と、このままの調子でいったときの月末の見込み、そして上限までの残り時間です。並び順は残り時間の少ない順、つまり危ない人が一番上に来る形にします。

氏名当月の残業(h)残り日数月末の見込み(h)上限まで(h)年度の累計(h)
A38.5652.0-7.0331
B27.0636.58.5204
C11.5615.529.596
D4.065.539.548

※ 氏名と時間は、形を見ていただくための見本です(実在の記録ではありません)。上限として何時間を入れるかは、御社の36協定の内容に合わせます。

見込みの出し方は単純な比例で十分です(今日までの残業 ÷ 経過した営業日 × 当月の営業日)。凝った予測を入れても当たりませんし、当たらない数字は誰も見なくなります。粗くても月の半ばに「このままだと超える」と分かることのほうが、精度よりずっと効きます。

第2段階:複数月平均と、年間の見張り

第1段階は「その月」だけの話でした。第2段階では、2か月平均・3か月平均…6か月平均と年度の累計、そして上限を超えた月が年に何回あったかを一緒に並べます。どれか1つでも決まりに触れそうな人には、画面上で印を付けます。

この段階で効いてくるのは、月ごとには収まっているのに平均で危ない人が見えることです。毎月45時間前後で推移している人は、単月の画面ではいつも「まだ余裕あり」に見えます。年計で見ると10月あたりで残りが薄くなり、1月には身動きが取れなくなっています。年計は、12枚のシートを開かなければ出ないという理由だけで、これまで誰も見ていなかった数字です。

第3段階:どの仕事に乗っているか

残業に工番や機械を紐づけると、どの仕事で残業が出ているかが見えます。特定の得意先の短納期品に毎回乗っている、特定の機械の段取り替えに乗っている、といった形が出てきます。ここまで来ると、見積の時間と実際にかかった時間の突き合わせや機械の空き状況とつながって、値段と納期の決め方の話になります。

第3段階は後回しで構いません。第1段階だけで「事後に知る」状態はほぼ無くなります。ただし第1段階の時点で、日ごとの1行を残す形にしておいてください(月の合計だけを持つ形にすると、第2段階の平均も第3段階の紐づけも後から足せません)。残すのは日ごとの1行、これだけ最初に決めておきます。

逆に、期待しないほうがいいこと

よくある質問

紙のタイムカードです。変えないといけませんか

変えなくて構いません。紙のまま、入力だけを毎日にする形が現実的です。1日ぶんの打ち込みは全員で5分ほどなので、朝礼のあとに事務の人が1回叩けば終わります。月に1回の半日が、毎日5分に変わるだけで、合計の手間はむしろ減ります。打刻機からCSVが出せる場合は、取り込む形にできます。

給与ソフトに勤怠の機能が付いています

付いていても、月の途中の累計と着地見込みを出す画面は無いことが多いです。給与ソフトは締めてから計算するものなので、それで正しい作りです。足りないのは途中経過のほうなので、給与ソフトはそのまま使い、こちらは日々の時間だけを外に持つ形にします。考え方はパッケージの外に残る仕事と同じです。

15人ほどの工場です。多すぎて分からない規模ではありません

人数の問題ではありません。15人でも、今日時点の累計は誰も知りません。むしろ人数が少ないほど、1人に寄ったときの逃げ場が無いので効きます。逆に、残業がほとんど出ていない(全員が月10時間以下で安定している)なら、この仕組みは要りません。要らないときは、そう申し上げます。

変形労働時間制をとっています

1年単位・1か月単位のどちらでも、所定の時間をカレンダーで持てば同じ形で出せます。日ごとの所定が違うだけなので、比較の相手が固定の8時間ではなくカレンダーの値になります。ただしどの時間が割増の対象になるかの判断は入れません(上に書いたとおり、そこは社労士の領域です)。画面は御社のカレンダーと実績の差を出します。

直行直帰や、客先での作業があります

スマホから入力できる形にします。工場に戻ってから打つのでも構いませんが、その日のうちに入っていないと着地見込みがずれます。入っていない人が分かるように、未入力の日を画面に出す形にしておきます。

数字を出すと、現場が管理されていると感じないでしょうか

出す相手を選べます。本人には自分のぶんだけ、管理職には全員ぶんという分け方ができます。実際のところ、いちばん驚くのは本人であることが多いです。自分が月に何時間残業しているかを正確に言える人は、あまりいません。並べ方も「多い順のランキング」ではなく「上限までの残り」にしています。減らす競争ではなく、間に合わせるための数字にするためです。

年度の途中から始めても意味がありますか

あります。4月からの累計は、いまのExcelから合計値だけ入れれば足ります(日ごとに遡って入れる必要はありません)。月別の合計を12行入れるだけで、年計と複数月平均はその日から出ます。日ごとの1行が必要なのは第3段階だけなので、そこは始めた日から先のぶんで構いません。

何人まで使えますか

ライトプランは数人での利用を想定しています。入力する人が1〜2人(事務の方)で、見る人が社長と工場長、という形ならこの範囲です。本人がそれぞれスマホから入力する、本人には自分のぶんだけ見せる、という形にするとスタンダードになります(ログインが要るため)。

データは誰が持つのですか

御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。勤怠は個人に紐づく情報なので、扱う項目は氏名と時刻に絞り、必要のないものは持ちません。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

第1段階(日々の入力、当月の累計と着地見込み、上限までの残り、印刷とCSV)はライトプランの範囲です。複数月平均と年度の見張り、本人ごとのログイン、工番や機械との紐づけまで入れるとスタンダードになります。いまお使いのタイムカードと給与ソフトは、そのままで構いません。上限の数字を変える、締め日を変える、カレンダーを入れ替えるといった調整は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。

「今日時点で、誰があと何時間か」を1画面にします

従業員の人数と、先月いちばん残業が多かった人のおおよその時間。それだけで十分です(氏名は伏せていて構いません)。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。全員が月10時間前後で安定しているなら、この仕組みは要りません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。

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