「これ、入ってきたときからですか」
加工の途中で、材料に傷が見つかります。あるいは外注から戻ってきた部品の寸法が外れています。現場の人が作業を止めて、こう聞きます。「これ、入ってきたときからですか」。その場で答えられた経験は、たぶんあまり無いと思います。
先に結論を書きます。受入検査でいちばん困るのは、検査が甘いことではありません。検査した結果がどこにも残らないので、後から「入ってきた時点でどうだったか」を引けないことです。見た人は見ています。納品書の隅に鉛筆で丸を付けた人もいます。けれどその紙は、翌月には伝票の束の中です。順番に説明します。
受入の記録が残らない3つの理由
1. 受けるのは現場で、紙は事務に行く
物が着く場所と、納品書が行き着く場所は違います。物はトラックから現場の棚へ、紙は事務の机へ。検査をするのは現場の人で、記録を綴じるのは事務の人です。間に「検査したかどうか」を渡す欄がありません。
結果として、事務に届く納品書は「届いた」証拠にはなりますが、「見た」証拠にはなりません。会計の処理はそれで進みます。進んでしまうので、誰も困りません。困るのは半年後、客先から不良の連絡が来た日です。
2. 検査するかどうかの基準が、人の頭の中にある
全数見る物、抜き取る物、見ないで通す物があります。それ自体は正しい判断です。問題は、その区分が品番ごとに決まっているのではなく、受けた人の経験で決まっていることです。いつもの仕入先のいつもの品だから通す、という判断は、ベテランがいる間だけ正しく働きます。
人が代わった日に何が起きるかというと、全部見るか、全部通すかのどちらかに振れます。前者は受入が滞り、後者は後工程で止まります。どちらも「決め方が書いていない」ことの現れです。
3. 不適合のときだけ、記録が残る
返品した、選別した、仕入先を呼んだ。こういうときは記録が残ります。メールが残り、不適合報告書が残ります。ところが合格したときの記録はゼロです。
これが効いてくるのは、仕入先を評価しようとしたときです。手元にあるのは不適合の件数だけで、分母にあたる受入の回数がありません。「A社は今年3件やらかした」と言えても、それが30回納品のうちの3件なのか、300回のうちの3件なのかが出ません。件数だけでは、多いのか少ないのかが決まりません。
この3つに共通していること
どれも検査をしていないという話ではありません。検査は現場でされていて、記録だけが通り過ぎています。合格した回が残らないので、分母が無く、仕入先の比較ができない。入ってきた時点の状態が残らないので、後から責任の切り分けができない。やっていない仕事を足すのではなく、やっている仕事を1行だけ残す話です。
本当に重いのは、選別し直しの半日ではありません
入ってきた物が駄目だったとき、選別や手直しに半日かかります。それは確かに痛いのですが、その場で終わる痛みです。重いのはそのあとに残る2つのほうです。
1つめは、「うちのせいか、入ってきた時点からか」が決まらないことです。客先に不良を出してしまったとき、原因を書いて出すことになります。ここで受入時の記録が無いと、自社の工程を疑うところから始めるしかありません。調べて、結局材料だったと分かるまでに数日かかります。その数日ぶんは、丸ごと記録が無いことの費用です。
2つめは、仕入先に言えないことです。不適合が続いている感触があっても、根拠が「印象」だと切り出せません。逆に、「御社は今年42回納品のうち5回、うち3回は同じ外観の傷です」と言えるなら、これは責めではなく事実の共有になります。多くの場合、相手も気づいていません。値段を下げる交渉より、この1枚のほうが効きます。
ISO9001を持っているなら、もう求められています
8.4項(外部から提供されるプロセス・製品の管理)は、供給者を評価する基準を決め、評価し、その記録を残すことを求めています。審査のたびに「購買先の評価はどうされていますか」と聞かれて、クレームが来た先の話だけで答えているなら、足りていないのはたいてい分母のほうです。持っていない会社でも、客先監査で同じことを聞かれます。
やることは、受けた日に1行入れるだけです
入れるのは8項目、1件30秒です
物が着いた日に、受けた人が画面で入れます。納品日・仕入先・品名(または品番)・ロットか製番・数量・検査区分(全数/抜取/無検査)・判定(合格/不合格/特別採用)・不適合の中身。合格ならそこまでで、文字を打つのは不適合のときだけです。納品書は写真で添えられれば十分です。
ここで一つだけ決めておくことがあります。検査区分を、受ける人ではなく品番に持たせることです。この品番は全数、これは10個に1個、これは無検査。一度決めてしまえば、画面がその区分を出します。人が代わっても振れません。決めるのは最初の1回だけで、あとは例外が出たときに直します。
出てくるのは2つです
1つめは仕入先ごとの受入回数と不適合の件数。分母と分子が同じ場所から出るので、割合がそのまま出ます。2つめはロットから引く画面です。「この製番に使った材料は、どの納品のどのロットで、受入時の判定は何だったか」。冒頭の「入ってきたときからですか」に、その場で答えられるのはこれです。
材料の証明書そのものをどう保管するかはミルシートの記事に書きました。この記事はその手前、受け取った日に見たかどうかの話です。自社で作った物を測って出す側は検査成績書の記事のほうになります。向きが逆なので、同じ台帳には入りません。
やらないこと
ここを取り違えると大きくなりすぎます。購買システムでも、発注から支払までの一式でもありません。発注書を起こす機能も、在庫を引き当てる機能も要りません。欲しいのは「10月1日/B社/丸棒S45C φ30/ロットL-114/20本/抜取/合格」の1行と、それを仕入先とロットで引ける画面です。それだけです。
特別採用(特採)の扱いだけ、先に決めておきます
外れているけれど使う、という判断をすることがあります。これを「合格」に混ぜると、仕入先の数字が実態より良く出ます。かといって「不合格」にすると、返品した回と区別がつきません。判定は3つ(合格・不合格・特別採用)にしておくのが、後から効きます。特採が多い仕入先は、不適合が少ない仕入先として表に出てきてしまうためです。
3段階に分けます
第1段階:受入1行と、仕入先ごとの割合
受けた人がその場で8項目を入れ、仕入先ごとに「受入回数/不適合件数/割合」が出るところまで。印刷とCSVを付けます。ここまでがライトプランの範囲です。最初の1か月は数字が出ません。分母が貯まっていないからです。3か月で比較できる形になります。この「最初は何も出ない」ことを先に言っておかないと、たいてい2週間で止まります。
品番ごとの検査区分(全数/抜取/無検査)は、最初に一覧で登録します。全部を決める必要はありません。よく入ってくる上位20品番だけ決めて、残りは「未設定=受けた人の判断」で構いません。未設定のまま3か月回すと、どの品番を決めるべきかが受入の回数から出ます。
第2段階:ロットから引く、不適合の処置まで残す
「この製番に使った材料は、どの納品のどのロットか」を引けるようにします。受入のときにロットを入れておき、払い出すときに製番と結びます。ここが繋がると、客先から連絡が来た日に、同じロットを使った他の製番も同時に出ます。1件の問い合わせが、何件の出荷に及ぶのかがその場で分かる、というのが実務でいちばん効くところです。
不適合だったときの処置(返品/選別して使う/特別採用/仕入先で手直し)と、その結果も同じ行に残します。処置まで入れておくと、「不適合は出たが自社で選別して納期は守った」回が見えます。この回は仕入先の数字には乗せるべきですが、客先への遅れとしては数えません。混ぜると、どちらの数字も使えなくなります。
第3段階:仕入先の評価表と、受入の予定
年に1回か半年に1回、仕入先の評価を出す形にします。項目は不適合率・納期の遵守・処置の早さあたりで、どれも第1・第2段階で入れた行から出ます。新しく入力する項目はありません。ISO9001の8.4項で求められる記録は、この表がそのまま使えます。
注文の残(いつ、何が、いくつ入ってくる予定か)を入れておくと、受入の画面が予定と突き合わせます。数量違いと納期遅れがその場で分かるので、「来るはずの物が来ていない」を月末の照合まで持ち越さずに済みます。ここは発注の情報が要るので、既にお使いの販売管理ソフトから出せるならCSVで取り込みます。
よくある質問
検査の基準そのものは、どう決めればいいですか
そこは御社の技術の判断なので、こちらでは決められません。決まっている基準を、そのまま画面に載せるところまでが当社の仕事です。基準が文章になっていない場合は、まず「全数か/抜取か/無検査か」の3つだけを品番に付けるところから始めるのをお勧めします。寸法の公差や外観の限度見本は、その次の話です。
無検査で通している品番が多いのですが、まずいでしょうか
まずくありません。全部を見るのは現実的ではないので、どこかで通すのが正しい運用です。問題になるのは、通していること自体ではなく、通すと決めた記録が無いことです。「この品番は無検査と決めている」と書いてあれば、それは判断であって抜けではありません。監査で聞かれたときに差が出るのはここです。
仕入先に数字を見せると、角が立ちませんか
出し方によります。割合だけを渡すと詰問になりますが、「42回のうち5回、うち3回は同じ外観の傷」まで出すと、相手の社内で原因を探せる形になります。多くの場合、仕入先はその傷がいつ付いているかを知りません。責める材料ではなく、相手が直せる材料として渡すほうが結果が早いです。
紙の検査表が既にあります。入れ直すことになりますか
過去の分を入れ直す必要はありません。始めた日から先だけで構いません。3か月で比較できる形になるので、遡る手間をかけるより、今日から入れ始めるほうが早く数字になります。紙の様式をそのまま画面にしたい場合は、現物をいただければその並びで作ります。
受けるのが現場なので、パソコンがありません
スマートフォンで入ります。受入の8項目は、画面1枚に収まる量です。納品書の写真を撮って添える使い方が多いので、むしろ現場の端末のほうが向いています。事務のパソコンからは同じデータを一覧と印刷で見られます。
データは誰が持つのですか
御社専用のURLで、御社のデータだけが入ります。他の案件に混ぜることはありません。ライトプランは画面の中で完結する作りなので、ブラウザの中に保存してCSVで持ち出す形にもできます。社内のパソコン以外に置きたくない場合は、そう言っていただければその形にします。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(受入1行の入力、品番ごとの検査区分、仕入先ごとの受入回数と不適合の割合、印刷とCSV)はライトプランの範囲です。ロットから製番を引く、不適合の処置まで残す、仕入先の評価表を出すところまで入れるとスタンダードになります。いまお使いの販売管理ソフトと会計ソフトは、そのままで構いません。検査区分の変更、評価項目の入れ替え、様式の差し替えといった調整は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
「入ってきた時点でどうだったか」を、その場で引ける形にします
月にだいたい何回くらい物が入ってくるか、仕入先は何社くらいか。それだけで十分です(社名は伏せていて構いません)。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。いまの紙の検査表で仕入先ごとの割合がすぐ出せているなら、この仕組みは要りません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
メールで相談する 入力フォームで相談する今いちばん手間になっている作業をひとつ教えていただければ、その作業に合わせた試作画面を 1 枚、無料でお作りします。
その作業をここに書いて送る(無料の試作画面を頼む) →入力フォーム。会社名・お名前・メール・作業の4項目だけです。メールソフトは要りません。
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入力フォームからお送りいただけます(メールソフトは要りません)。メールでお送りになる場合は、下の内容をコピーして tool48h.studio@gmail.com 宛にどうぞ。件名は何でも構いません。
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