月初の3日が、請求書づくりで消えていく
月が変わります。納品書の控えを綴じたファイルを出してきて、客先ごとに仕分けます。20日締めが3社、残りは月末締め。春に上げたはずの単価が古いまま出ている品番がひとつ見つかって、伝票を遡ります。検収数が1個合わない客先には電話をかけます。全部終わるのが3日目の夕方で、そこから郵送とメールとFAXに分かれます。翌月も、まったく同じことをします。
先に結論を書きます。請求書づくりが重いのは、書式が難しいからではありません。納品したその日に立っていたはずの1行が、集計できる形でどこにも残っていないからです。紙の納品書は、印刷した瞬間に「渡す物」になります。控えは残りますが、それは束であって、数えられる行ではありません。だから月初に、束から数字を起こし直す作業が発生します。請求書は、作るものではなく、溜まった行を締め日で切り出したものであるべきです。順番に説明します。
月初が消える3つの理由
1. 納品の記録が、紙で終わっている
納品書はExcelの雛形に打ち込んで印刷します。上書きで次の客先を打つ会社もあれば、日付でファイルを分けて残す会社もあります。どちらにしても、1か月ぶんを横に並べて合計する形にはなっていません。ファイルが残っていても、シートの位置がその日の都合でずれているので、機械的には足せません。結果、控えを1枚ずつめくって表に書き写すことになります。これは転記であって、判断の仕事ではありません。月に一度しか起きないので改善の対象になりにくく、何年も続きます。
2. 単価が、請求のたびに引き直されている
単価は見積書、注文書、価格表、そして担当者の記憶に散らばっています。納品書を書くときに引き、請求書を作るときにもう一度引きます。2回引けば、2回とも同じ値になる保証はどこにもありません。改定があった月は特に危なくて、改定日の前後で納品が混ざります。「4月1日納品ぶんから新単価」と決めていても、3月31日出荷・4月1日着の1件がどちらなのかは、書く人の判断になります。
怖いのは間違えることそのものより、間違いが客先の検収で見つかることです。赤伝と再請求が発生し、翌月の締めがさらに重くなります。この構造は再受注の見積の記事と同じで、単価が「品番と客先の組」に紐づいて残っていない限り、引くたびに揺れます。
3. 締めの単位が、客先ごとに違う
20日締め、月末締め、15日締め。支払いサイトも翌月末と翌々月10日が混ざります。さらに、納品基準で締める客先と、検収基準で締める客先があります。検収基準の客先は、こちらが納めた日ではなく、先方が受け入れた日で月が決まります。月末に納めた1件が翌月の請求に回るかどうかは、先方の処理次第です。
Excelで作ると、この違いはファイルを分けることで表現されます。客先ごと、月ごとにファイルが増え、去年の同じ月を見たくなったときに探せません。そして分けたファイルの数だけ、締め日の設定が人の記憶に戻ります。担当が変わると、20日締めの客先が月末で締められます。
この3つに共通していること
どれも「経理がだらしない」という話ではありません。納品という出来事と、請求という書類が、別々の作業として置かれているというだけです。納品は現場で起きて紙で終わり、請求は事務所で月初に紙から起こされます。あいだをつなぐ物が無いので、毎月そのぶんを人が埋めています。埋めている時間が月初の3日で、その3日は毎月必ず来ます。
直す場所は、月初ではありません
月初の作業を速くしようとすると、たいてい「請求書の雛形を良くする」「マクロで集計する」という方向になります。効きますが、天井は低いです。元になる納品の行が紙のままなら、結局どこかで人が読んで打ち直すからです。
効くのは、納品したその日です。納品書を画面から出すようにすると、印刷すると同時に1行が残ります。その日はいつもと同じ手間で終わり、月初にはもう集計が終わっているという状態になります。順番が逆に見えますが、増える手間はゼロに近く、減る手間は3日ぶんです。
- 納品したその日に、品番・数量・単価・客先・日付の1行が残る
- 締め日が来たら、その客先の締め区分で該当する行だけが自動で切り出される
- 請求書は、その切り出しを印刷したもの。数字を打つ場面が一度も無い
作るもの:3段階に分ける
第1段階:納品書を画面から出す
いま使っている納品書とまったく同じ見た目で印刷できる画面を作ります。様式は変えません。客先の指定様式がある場合はそれに合わせます。変えるのは、打ち込む場所がExcelから画面になることだけです。
これだけで、印刷した内容が1行ずつ残ります。月初の集計は、その行を締め日で絞って合計するだけになります。第1段階の時点で、転記はほぼ消えます。複写式の紙にボールペンで書いている会社でも、書いた内容を画面に入れる形に変えれば同じ効果が出ます(この場合は入力の手間が一度だけ増えますが、月初の3日と引き換えです)。
納品書番号は画面が採番します。欠番と重複が無くなるので、客先からの「この番号の納品書が届いていない」という問い合わせに、その場で答えられます。
締め日の違いを画面が判定する動きを試す 卸向けに作った受注・納品・請求のデモです。受注を1件入れると得意先ごとの掛率で単価が入り、出荷すると納品書番号が付きます。月末締めと20日締めが混ざっていても、どの納品がどの月の請求に乗るかを画面が判定します。前回請求・入金・繰越を含む合計請求書がそのまま印刷でき、CSVでも出せます。部品加工の納品書でも、置き換わるのは品目の呼び方だけで、締めの仕組みは同じです。ブラウザだけで動き、入力したデータは端末の中だけに残ります。第2段階:単価を、品番と客先の組に持たせる
単価表を1枚にまとめ、客先・品番・適用開始日の3つで引けるようにします。納品の行を立てるとき、単価は自動で入ります。人が打つのは数量だけです。
適用開始日を持たせておくと、改定月の混乱が消えます。3月31日納品の行は旧単価、4月1日納品の行は新単価。画面が日付で選ぶので、書く人の判断が要りません。改定の連絡が遅れて過去に遡る場合も、適用開始日を入れ直せば該当する行だけが差額として出ます。
特別単価や、数量によって変わる単価がある客先は、行を足すだけで表せます。ここで大事なのは、単価を1か所にしておくことです。納品書と請求書が別々に単価を引いている限り、2つが食い違う可能性は残り続けます。
第3段階:締めの区分と、突合の差だけを出す
客先ごとに締め日(20日/月末/15日)と基準(納品日/検収日)を持たせます。締め日が来ると、その客先の該当する行だけが並びます。人がすることは、並んだ行を上から見て、おかしいものが無いかを確かめることだけです。
検収基準の客先には、先方から来る検収データ(CSVや支給されるWeb画面の控え)を取り込んで、こちらの納品の行と突き合わせます。ここで出すのは一致した行ではなく、合わない行だけです。数量が違う、単価が違う、こちらに無い、向こうに無い——この4種類に分けて並べれば、電話をかける先が最初から分かります。
有償支給を受けている場合の相殺も、この段で扱えます。支給を受けた分を控除項目として持ち、請求額から引いた形で出します。支給材の受け払いを別のExcelで管理していると、相殺の額だけが毎月手計算になります。
逆に、期待しないほうがいいこと
- 会計ソフトの置き換えはしません。仕訳・元帳・決算は、いま使っているソフトのままです。作るのは請求書を出すところまでで、その結果をCSVで会計側に渡します。会計そのものに手を入れると、48時間では終わりませんし、決算の責任範囲が曖昧になります
- 入金の消込は、別の話です。請求を出すことと、入金が合ったかを確かめることは、必要なデータが違います(入金は通帳と銀行データの側にあります)。請求の側に「入金済/未入金」の印を付けるところまでは同じ画面でできますが、自動消込は範囲を分けて考えてください
- インボイス制度の要件は、様式として満たせますが、判断は税理士の領域です。登録番号・税率ごとの区分・税額の記載は画面に持てます。ただし、どの取引がどの税率かという判断や、免税事業者との取引の扱いは、顧問の先生に確認してください。こちらは「決めた扱いを毎回そのとおりに出す」ところを引き受けます
- 先方の締めは変えられません。検収が遅い客先の請求が翌月に回ることは、こちらの画面では解決しません。できるのは「どの行が先方で止まっているか」を見える形にすることまでです。それでも、月末に慌てて確認する電話は減ります
- 過去の請求は遡りません。始めた月からの行が溜まります。去年の同じ月と比べたいという要望はよく出ますが、過去ぶんの入力は、必要になったときに必要な客先だけ入れるほうが現実的です
よくある質問
販売管理ソフトを入れています。それでも月初は消えます
よくあります。ソフトに入っているのに時間がかかる場合、原因はたいていソフトの外に残った例外です。特殊な締め区分の客先だけExcel、有償支給の相殺だけExcel、客先指定の様式だけExcel。この「だけExcel」が3つ並ぶと、ソフトを見ながらExcelを直す作業になり、かえって遅くなります。この場合に作るのは請求書そのものではなく、例外を引き受ける1画面です。考え方はパッケージの外に残る仕事の記事と同じで、中心のデータは元のソフトに置いたままにします。
客先ごとに請求書の様式が違います
様式は複数持てます。データは1つで、印刷の型を客先ごとに選ぶ形にします。指定のフォーマット(先方から支給されるExcelやWeb入力)がある客先は、そこに貼れる形のCSVを出すところまでにします。先方のWeb画面への自動入力はしません。先方のシステムの仕様変更で黙って壊れる作りになるので、ここは人の手を残したほうが安全です。
手書きの納品書をやめられません
やめなくて構いません。現場で複写に手書きし、事務所で画面に入れる——この形でも月初の3日は無くなります。入力は1件30秒程度です。「二重入力になるのでは」と言われますが、いまも月初に全件を読み直しているので、読む回数は同じか減ります。現場のタブレットから入れられる会社は、そちらのほうが早いです。
締め日が変則的です(客先の指定で25日締めなど)
日付で持つので、何日でも設定できます。変則で困るのは、締め日が土日祝にかかったときの扱いです。前倒しか翌営業日か、客先ごとに決まっているはずなので、その規則も一緒に持たせます。ここは人の記憶に残りやすく、担当が代わったときに黙って変わる部分です。
数量が合わないとき、どちらが正しいのですか
画面は判定しません。「合っていない」ことを出すところまでです。原因は、分納の片方が未計上、検収漏れ、不良返品の処理待ち、といったところに分かれます。並べたうえで、差の理由を1行書ける欄を付けておくと、翌月に同じ話をせずに済みます。この「理由が残らないので毎回やり直す」構造は不良とクレームの記録の記事と同じです。
請求書を郵送しています。電子化できますか
PDFで出してメールに添付するところまでは同じ画面でできます。郵送をやめるかどうかは客先の都合なので、両方出せる形にしておきます。電子帳簿保存法の関係で、出した請求書の控えを検索できる形で保存する必要がありますが、行として残るので取引先名・日付・金額での検索は満たせます。要件の解釈は顧問の先生に確認してください。
経理は1人です。その人が休んだら止まります
この問題のほうが、時間短縮より大きいことがあります。手順が人の頭にあるうちは代わりが利きません。締め日と基準と単価が画面に入っていれば、締めのボタンを押して並んだ行を見る作業になるので、代わりの人でも回せます。属人化を解くことが、実は月初3日の短縮より効く場合があります。
データは誰が持つのですか
御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。請求のデータには客先名と取引条件が含まれるので、扱いには特に気をつけます。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
第1段階(納品の1行を残す画面、納品書の印刷、締め日での切り出し、請求書の印刷とCSV)はライトプランの範囲です。複数人が同時に入れて誰が入力したかを残す、単価表を改定日つきで持つ、検収データを取り込んで突合の差を出す、客先ごとに様式を分ける——このあたりはスタンダードになります。締め区分の追加や様式の微調整は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
月初に数字を打つ場面が一度も無い状態にします
いまお使いの納品書と請求書を1枚ずつ(客先名と単価は伏せていて構いません)と、客先ごとの締め日がいくつあるか。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。すでに販売管理ソフトで締めまで回っていて、例外がひとつも無いのなら、作るものはありません。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。
メールで相談する 入力フォームで相談するボタンを押してもメールが開かないときは
入力フォームからお送りいただけます(メールソフトは要りません)。メールでお送りになる場合は、下の内容をコピーして tool48h.studio@gmail.com 宛にどうぞ。件名は何でも構いません。
この記事に近い業種のページ:卸売業
関連:前はいくらで出しましたっけ / パッケージの外に残る仕事 / 無料診断でプランを調べる / 記事一覧
48時間