「弊社の支給品、あと何本あります?」
客先から材料が届きます。納品書が付いています。現場の棚に置かれます。指図が出て、使われます。端材が残り、たまに削り損ないます。そして半年後、客先の購買から電話が来ます。「棚卸なので、弊社の支給品が御社に何本残っているか教えてください」。棚を数えに行きます。数えた数と、向こうが言っている数が合いません。
先に結論を書きます。支給品の残数が合わないのは、数え忘れているからではありません。入ってきた記録が納品書の束に、出ていった記録が指図書の裏に、余りと損料が誰かの記憶に、それぞれ別の場所・別の単位で残っているからです。数えれば現物の数は出ますが、「なぜその数になったか」は数えても出ません。そこが本当に困っている場所です。
支給品の残数だけが、いつも合わない3つの理由
1. 受入・払出・目減りが、別々の紙に載っている
受入は客先の納品書、払出は自社の指図書か現場の記憶、端材と不良はどこにも載りません。この3つが揃って初めて残数になるのに、揃う場所がありません。自社で買った材料なら、少なくとも受入は仕入伝票として経理に立ちます。ところが支給材は買っていないので、金額の動きが無く、会計側に何も残りません。在庫表の外に落ちるのは、担当者が怠けたからではなく、会社の記録の本流がお金で動いているからです。
2. 受けるときの単位と、使うときの単位が違う
丸棒を「6m × 20本」で受けて、使うときは「1個あたり120mm」で切ります。板は「1250×2500 × 15枚」で受けて、使うのは面積です。樹脂ペレットは25kg袋で受けて、ショット数で減ります。ここで換算が人の頭の中にしかないと、残りを本数で答えるのか長さで答えるのかが人によって変わります。客先が聞いているのはたいてい受入時の単位(本・枚・kg)なので、現場の感覚(あと3本ぶんくらい)とそのまま噛み合いません。
3. 減る理由が、出荷だけではない
支給材が減る理由は、良品として納めたぶんだけではありません。
- 端材・切り代・つかみ代(定尺から取れる個数が半端になる)
- 自社責の不良(削り込み、位置ずれ、熱処理の割れ)
- 支給材そのものの不良(曲がり、キズ、材質違い=これは客先に返す話になる)
- 初物の試作・検査用の切片(材料試験に出す分)
- 客先への返却・他工場への転送
このうち「自社責」と「支給材の不良」を区別できないと、弁償の話になったときに何も言えません。合わない数量がまとめて自社の責任にされるのは、たいていここが記録されていないからです。
この3つに共通していること
どれも在庫管理をしていないという話ではありません。支給材は他人の物なので、自社の在庫の仕組みに最初から入っていないというだけです。買っていないから仕入に立たず、売っていないから売上に立たない。お金が一度も動かない物だけが、記録の外側に置かれています。それでいて、数が合わないときの責任だけは自社に来ます。
やりたいのは、在庫管理ではありません
ここを取り違えると大きくなりすぎます。欲しいのは発注点でも、適正在庫でも、引当でもありません。「支給番号 S-2041:受入120本、良品納入96本、端材12本、自社責不良3本、支給材不良2本(返却済)、残7本」の1行です。これが客先から電話が来た日に、その場で言えること。それだけです。
自社材料の在庫とは、必要とされているものが違います。自社の材料は、足りなければ買えば済みます。支給材は足りない=預かった物が無くなっているということで、追送の依頼、弁償の相談、その間の納期遅延が同時に起きます。だから大事なのは残数そのものより、減った理由を1行ずつ言えることです。自社で買う材料の在庫と発注点の話は材料発注の記事に書きました。ここはその裏返しで、数量を当てにいく話ではなく、説明できる状態にする話です。
作るもの:3段階に分ける
第1段階:受けたときに、1行だけ入れる
客先から材料が届いた日に、客先・支給番号・品名(材質と寸法)・数量・単位・受入日・先方の伝票番号を1行入れます。納品書は写真で添えられれば十分です。1件40秒です。
ここで一つだけ決めておくことがあります。受入時の単位を、その支給番号の「正」とすることです。6m×20本で受けたら、以後その番号はずっと本数で数えます。長さで管理したい現場の都合は分かりますが、客先が聞いてくるのは自分が送った単位です。長さは換算として画面が出せばよく、正を二つ持つと必ずずれます。
第2段階:出ていくときに、理由を選ぶ
現場の入力です。工番と数量に加えて、減った理由を選択肢から選びます。良品納入/端材・切り代/自社責の不良/支給材の不良/試験・検査/返却・転送。文字を書かせず、ボタンを選ぶだけにします。理由の種類は6つ前後で足ります。多すぎると現場が「その他」を押します。
ここで画面がやることは一つ、受入数から理由別の合計を引いた残数を、その場で出すことです。入れた本人に残りが返ってくるので、「入れ得」も「入れ損」もありません。入れた数字が誰にも返らない仕組みは、必ず半年で止まります。この構造は日報の転記の記事に書いたことと同じです。
「入った数・使った数・残り」が画面の中で動く様子を試す クリニック向けに作った物品在庫のデモです。支給材の画面そのものではありませんが、入荷と使用を1行ずつ入れると残数がその場で変わり、一覧と発注書を印刷・CSVで外に出せるという作りは同じです。支給材の画面では、これに「減った理由」と「客先・支給番号」の区別が加わります。ブラウザだけで動き、入力したデータは端末の中だけに残ります。第3段階:月末の残高を、客先の様式のまま出す
支給を受けている会社では、月末や期末に「預り品残高報告書」を求められることがよくあります。様式は客先ごとに違い、たいていExcelの指定フォームで来ます。ここは全部を自動化しようとせず、画面から客先別・支給番号別の残高をCSVで出し、指定フォームに貼る形で十分実用になります。
そのうえで、画面側には先方の言う数と自社の数が違うときに、差を説明する材料を置きます。受入から今日までの1行ずつの明細——いつ何本納め、何本を端材とし、何本を不良としたか——がそのまま出れば、話し合いは「数え直し」ではなく「この端材12本の見方が違いますね」から始められます。合わないこと自体は、実は珍しくありません。合わない理由を先に出せるかどうかが違いを生みます。
逆に、期待しないほうがいいこと
- 数が合うようにはなりません。合わない理由が言えるようになるだけです。端材の見方や歩留まりの前提が客先と違えば、記録を正確にするほど差ははっきり出ます。それを早く見つけて話すための道具で、差を消す道具ではありません
- 過去の分は戻せません。いま棚にある物の残数は、現物を数えて期首として入れるところから始めます。「なぜその数か」が言えるようになるのは、そこから先の出入りだけです
- 有償支給の売買処理まではやりません。有償支給(材料を買い取って加工品として売る形)は会計処理が絡みます。この画面が持つのは数量と理由だけで、金額と仕訳は今の会計の流れのままにしてください
- 現場が理由を選ばなければ、残数は出ません。理由の選択が一つ抜けると、その分は残数に居残ります。画面が代わりに推測することはしません。分からない分は「不明」として別に積み上げ、数字に混ぜません
- 客先のシステムとはつながりません。先方のEDIや購買システムから支給の予定を受け取る話は、外部連携が要るのでスタンダードの範囲になります。まずはCSVと手入力で足ります
よくある質問
支給材は自社の材料と同じ棚に置いています。分けるべきですか
現物を分けるかどうかは現場の都合で決めてください。記録の上では必ず分けます。同じ帳面に混ぜると、自社材料の在庫評価に他人の物が乗り、棚卸のときに毎年その切り分けをやり直すことになります。現物が同じ棚にあるなら、画面の側に「置き場」の列を1つ足して、支給品の札の番号を入れておくと現物と記録が結び付きます。
端材はどこまで記録しますか
次に使える大きさのものだけ、残数に残します。使えない切り落としは「端材」として減らして終わりです。ここを細かくすると現場が続きません。目安は「もう一個取れるか」で、取れるなら残し、取れないなら減らす。判断が割れる寸法を一つ決めておくと迷いません。
支給材そのものに不良があったときは
自社責の不良とは必ず別の理由で記録してください。ここが混ざると、月末に出てくる数字が「御社で3本無くなっています」という一言にまとめられます。曲がり・キズ・材質違いは、見つけた日付と、できれば写真を1枚添えて残します。見つけた当日に伝えた記録があるかどうかが、後の話し合いをほとんど決めます。不良の記録の残し方そのものは不良とクレームの記事に書きました。
複数の客先から、同じ材質の支給を受けています
これが一番危ないところで、支給番号(またはロット番号)を正にします。材質と寸法が同じでも、A社の物とB社の物は別です。現物にも札を付け、画面でも番号で数えます。「同じ材料だから」で融通した1本が、半年後に両方の残数を狂わせます。融通するなら、それ自体を「転用」として両方に1行ずつ残してください。
生産管理ソフトに在庫の機能があります
あるなら、そちらを使ってください。足りないのはたいてい「所有者が自社でない在庫」という区分と「減った理由の内訳」の2つです。この2つだけを外に作り、実績はCSVで受け取れば足ります。中心のデータを移す必要はありません。この線引きはパッケージの外に残る仕事と同じ考え方です。
誰が入力するのですか。現場は忙しいです
受入は、荷受けをする人が届いた日に1行。払出は、すでに実績を入れている場面があるならそこに数量を足すのがいちばん続きます。新しく入力の場面を増やすほど止まります。もし現場での入力が現実的でなければ、まず受入と月末の現物数だけを入れて、差を「不明」として見るところから始めても意味があります。不明がどれくらい出ているかが分かるだけで、次に何を記録すべきかが決まります。
紙の受払簿を付けています。これで十分では
正しく回っているなら十分です。困るのは客先から電話が来たときに、その場で答えられるかです。バインダーを探して足し算をする時間が毎回20分かかっているなら、そこが置き換わります。逆に、支給が月に数件で、担当者が一人なら、紙のままのほうが安く済みます。そういう場合は正直にそう申し上げます。
棚卸のときだけ数えれば足りるのでは
数は出ます。差の理由が出ません。年に2回の棚卸で12本足りないと分かっても、その12本がいつ何で減ったかは半年前には戻れません。結果として自社が負担する形で丸められます。1行ずつ残すのは、数えるためではなく、差が出たときに遡れるようにするためです。
まず何から始めればいいですか
いま預かっている支給品を、客先別・支給番号別に紙1枚に書き出してみてください。そこで「単位が書けない」「この番号の物がどれか分からない」が出たら、それが最初に直すところです。書き出せてしまったなら、いまは仕組みを作るタイミングではありません。支給の件数が増えてからで間に合います。
データは誰が持つのですか
御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。支給材の記録には客先名と取引の中身が含まれるので、扱いには特に気をつけます。
費用と期間
| プラン | 内容 | 期間 | 金額(税別) |
|---|---|---|---|
| ライト | 画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用 | 48時間 | ¥98,000 |
| スタンダード | 画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ | 5営業日 | ¥298,000 |
| 保守・改修 | 月2件までの改修、不具合対応は無制限 | 月額 | ¥30,000 |
受入と払出を1人が入れて、客先別・支給番号別の残高を印刷とCSVで出すところまではライトプランの範囲です。現場の端末から複数人がそれぞれ入力して誰が入れたかを残す、生産管理ソフトの実績をCSVで取り込む、客先ごとの残高報告フォームに合わせて出す——このあたりはスタンダードになります。理由の区分を足す、単位の換算を変える、といった変更は保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。
「その支給番号は、いま7本です。内訳はこうです」がその場で言える状態にします
いまお使いの受払簿を1枚と、客先から来る残高報告の様式を1枚(客先名と品番は伏せていて構いません)。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。支給が月に数件で、いまの紙で困っていないのであれば、作らないほうがよいとお伝えします。相談は無料です。
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