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「その品番、いまいくらで出していましたっけ」

2026年9月25日 / 48時間ツール工房 / 得意先別の単価と価格改定

材料が上がったので、値上げのお願いを出すことになりました。まず、いまいくらで出しているかを調べます。見積フォルダを開いて、A社の品番C-12を探します。去年の11月の見積書が出てきました。あった、と思ったら、その後に一度だけ下げた記憶があります。下げたときのやりとりはメールのどこかにあるはずです。交渉を始める前の「いまいくらか」を確かめるところで、半日が終わります。

先に結論を書きます。単価が見積書の中にしか無い限り、値上げは品番の単位でやり切れません。見積書は「そのとき出した金額」の記録であって、「いまの単価」ではないからです。要るのは、得意先と品番の組み合わせごとに、適用開始日つきで1行になっている台帳です。順番に説明します。

単価表を作っているのに、値上げが出せない3つの理由

1. 単価が「見積書の中」にしかない

Excelの見積書は案件ごとのファイルです。ファイル名は「20251104_A社_御見積.xlsx」で、中に10品番が並んでいます。品番の側から引こうとすると、フォルダを開いて回るしかありません。得意先別の単価表を別に作っている会社もありますが、たいてい途中で更新が止まっています。見積を出す人と単価表を直す人が同じであっても、忙しい日に一度飛ばすと、そこから先はもう信用できない表になります。信用できないので誰も見なくなり、見ないのでさらに更新されません。

2. いつから適用したのかが残っていない

単価表を上書きで直していると、前の単価が消えます。消えると「4月に値上げをお願いして通ったのに、5月の請求は旧単価だった」を後から検証できません。得意先から「その単価、いつからの話でしたか」と聞かれて、送信済みメールを遡ることになります。単価は「いまいくら」ではなく、「いつからいくら」で持つ必要があります。この1列があるかどうかで、値上げが作業になるか、思い出す仕事になるかが変わります。

3. 得意先ごとの例外が、担当者の頭にある

同じ品番でも、B社は月200個まとめてくれるので少し安い。C社は支給材なので加工賃だけ。D社は3年前の単価で止まったままになっている。この例外は、たいてい表には書かれていません。書かれていないので、値上げの対象一覧を機械的に作ると「そこは事情があるから外して」と後から言われ、作り直しになります。作り直しが重いので、次からは一覧を作らずに「思い出せる先」だけに出すようになります。出せる件数が、覚えている件数で頭打ちになります。

この3つに共通していること

どれも「表を作っていないから」ではありません。単価が、案件の記録の副産物になっているだけです。見積は案件ごとに出しますが、単価は品番と得意先に付きます。この2つは向きが違うので、案件のファイルから毎回読み取っていると、品番の側から数えられません。値上げは、品番の側から数える仕事です。

本当に重いのは、交渉ではありません

値上げのお願いを出すところまでは、時間さえかければできます。重いのは、通った後です。「6月1日から」と合意した単価が、6月の注文に反映されているか。手配と請求が旧単価のまま流れていないか。品番が20や30なら、目で追えます。100を超えると、通ったはずの値上げが静かに漏れます。

漏れても、得意先は言ってきません。こちらが出した請求書のとおりに払うだけです。半年後に粗利を見て「上げたはずなのに変わっていない」と気づきます。実際に起きるのは、だいたい次の3つです。

この3つは、単価に適用開始日と状態が入っていれば、すべて機械で検出できます。入っていなければ、1件ずつ人が突き合わせるしかありません。突き合わせは面倒なので、やらずに済ませます。やらずに済ませたぶんが、そのまま粗利の差になります。

作るもの:3段階に分ける

第1段階:得意先×品番の単価台帳(適用開始日つき)

列は、得意先・品番・品名・単位・単価・適用開始日・根拠(見積番号かメールの日付)・状態・備考。肝は適用開始日で、これがあると単価表は上書きではなく追記になります。同じ得意先・品番で行が増えていき、今日の日付で有効な行が「いまの単価」です。過去の単価は消えないので、いつからいくらだったかがそのまま履歴になります。

得意先品番単価(円)適用開始状態備考
A社C-121,2802025-04-01過去
A社C-121,4202026-06-01有効材料改定ぶん
B社C-121,1802024-10-01有効月200個まとめ
C社K-76402026-07-01依頼中支給材・加工賃のみ

※ 表の得意先・品番・単価は、形を見ていただくための見本です(実在の取引ではありません)。

同じ品番でも得意先ごとに行が分かれるので、例外は備考ではなく行そのもので表せます。担当者の頭にあった「B社はまとめてくれるから安い」が、画面に出てきます。出てくれば、次の改定でその行を外すかどうかを、思い出さずに決められます。

最初の取り込みは、いま出している見積書から品番と単価を拾うところからです。全部を一度に揃える必要はありません。よく出る品番の上から100行ほど入れば、値上げの一覧は作れます。残りは注文が来たときに1行ずつ足します。揃うまで使えない形にすると、たいてい揃う前に止まります。

第2段階:改定の一覧と、得意先に出す紙

材料の値上がり率や加工賃の見直し幅を入れると、対象の品番と、改定後の単価と、年間の影響額が一覧で出ます。年間の影響額は「直近12か月の数量 × 差額」で出します。この数字があると、社内で「どこから出すか」を決められます。全部を同時に出さなくてよくなるのが効きます。上位2割の得意先で影響額の8割になることが多いので、そこだけ先に出して、残りは次の期に回す判断ができます。

得意先ごとに紙1枚(またはPDF)を出します。載せるのは、品番・現行単価・改定単価・適用希望日。こちらの都合(材料がいくら上がった)は1〜2行で十分で、相手の購買が見たいのは自分の品番の一覧です。送った日と、返事の状態(依頼中・合意・保留・見送り)を台帳に持ちます。ここが第3段階につながります。

第3段階:注文・請求との突き合わせ

注文が入ったときに、その得意先・品番・注文日で台帳を引き、その日に有効な単価を出します。注文書の単価と違っていれば、その場で分かります。請求のときも同じで、締めの前に「台帳と違う行」だけが出てきます。

すでに販売管理ソフトをお使いなら、注文と売上のCSVを月に一度読ませるだけで十分です。台帳の単価と突き合わせて、違う行だけを出します。たいてい数行です。その数行が、通したはずの値上げの漏れです。

第3段階は後回しで構いません。第1段階だけでも、値上げの一覧は作れます。ただし第2段階で「依頼中・合意」の状態を持っておかないと、第3段階を後から足せません(何と突き合わせるかが決まらないため)。順番はこの通りが楽です。

逆に、期待しないほうがいいこと

よくある質問

品番が数千あります

全部を入れる必要はありません。直近12か月に注文があった品番だけで始めます。たいてい全体の2〜3割です。動いていない品番は、注文が来たときに1行足せば済みます。数千行を入れてから使い始めようとすると、入れ終わる前に改定の時期が過ぎます。

単価は商社経由で決まっています

台帳の「得意先」を商社にします。商社と最終ユーザーの両方を持ちたい場合は列を分けますが、値上げをお願いする相手は商社なので、最初は商社だけで構いません。最終ユーザーごとの数量を見たくなってから足しても、行の形は変わりません。

都度見積で、同じ品番を繰り返し受けることが少ないです

その場合は、この台帳より再受注の見積の記事の作り方のほうが合います。単価が品番に付かない仕事では、単価表は薄くしか効きません。代わりに効くのは材料費と加工単価(時間あたり)のほうなので、台帳の単位をそちらに変えます。同じ形を無理に当てないほうがいいです。

Excelの単価表がすでにあります

そのまま取り込みます。得意先・品番・単価の3列があれば移せます。適用開始日だけは新しく決める必要がありますが、分からないものは「不明」で入れて構いません。次の改定から履歴が積み上がるので、1回目の改定を過ぎれば自然に埋まります。

値上げのお願いの文面も作ってもらえますか

一覧と表は作ります。文面のひな形も一緒に用意しますが、最終的な言い回しは御社で直してください。取引の関係はこちらからは見えないので、そこはお任せするほうが確実です。

販売管理ソフトに単価マスタがあります

あるなら、そちらを正にします。足りないのはたいてい「適用開始日での履歴」と「改定の依頼状態」の2つです。その2つだけを外に作り、単価マスタはCSVで受け取る形にできます。考え方はパッケージの外に残る仕事と同じで、中心のデータは元のソフトに置いたままにします。

誰が入力するのですか

いま見積を出している人です。新しく増える入力は、単価が変わったときの1行だけです。値上げをお願いした日と、返事が来た日も、同じ行に足します。現場に増やしてよい入力は1日ひとつまでだと考えたほうがよく、これは日報の転記の記事でも書いたとおりです。

過去の単価を見せたくない相手がいます

台帳は社内のものなので、外には出ません。得意先に出す紙には、現行単価と改定単価の2つだけを載せます。いつから今の単価なのかを載せるかどうかは、相手ごとに選べるようにします。「3年据置でした」と書けるほうが通りやすい相手もいれば、触れないほうがいい相手もいます。

データは誰が持つのですか

御社のものです。CSVでいつでも書き出せます。お預かりしたデータを、他社の案件や第三者のサービスに使うことはありません。単価は取引先との合意事項なので、扱いには特に気をつけます。

費用と期間

プラン内容期間金額(税別)
ライト画面1〜2枚、機能1つ。個人〜数人での利用48時間¥98,000
スタンダード画面3〜6枚。データ蓄積・ログイン・通知・外部連携1つ5営業日¥298,000
保守・改修月2件までの改修、不具合対応は無制限月額¥30,000

第1段階(得意先×品番の単価台帳、適用開始日での履歴、印刷とCSV)はライトプランの範囲です。改定の一覧と得意先別の紙、依頼状態の管理、注文・売上CSVとの突き合わせまで入れるとスタンダードになります。お使いの販売管理ソフトはそのままで構いません。改定率の入れ方や帳票の様式変更は、保守の範囲(月2件までの改修)で対応できます。

「いま、どの得意先にいくらで出しているか」を数えられる状態にします

いまお使いの見積書か単価表を1つ(金額は伏せていて構いません)と、よく出る品番のおおよその数、値上げをお願いしたい得意先の数。それだけで十分です。画面が何枚になり、ライトとスタンダードのどちらなのかを1枚にしてお返しします。品番が20〜30で得意先が2〜3社なら、この仕組みは要りません。Excelの1シートで足ります。そのときは、その理由も正直に書きます。相談は無料です。

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